「魔王城突入」
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――ついに、その時は訪れようとしていた。反逆の刻まで残り30分を切っている。今この場にいるのは、モルドを除いた俺達一行である。
そして俺達の左右……軍略的に言えば両翼に、二手に別れた一揆団が息を潜めている。両翼の彼らは俺達より低い場所で待機しており、特に右翼側は彼らが実際に突入した際、俺達はその様子をこの位置から見下ろすことができる。
これら三つのグループは現在、城の周りを囲うような位置取りで各々の持ち場にて待機していた。それぞれ岩や草の影に隠れ、潜んでいることを誰にも悟られないようにしながら。
作戦の内容はこうだ。まず両翼の一揆団が先陣を切って警備の薄い二つの入り口に侵攻し、城内を撹乱させる。
そこへ俺達が城門から正面突破を狙う。混乱している城内ならば、いくら警備が強固な城門前と言えども反応が遅れるだろう。その隙を突くのだ。
そしてモルドはというと、まずザザンガルドサイドの人間として俺達と一度対峙をする流れで動く。こうすることで敵の油断を誘うのだ。そして戦局を見計らって俺達に寝返り、本丸のアルハート王を確実に始末する。
この作戦の中枢を担っているのは言うまでもなく俺達だ。俺達がしくじれば作戦全体が総崩れする。逆に言うと俺達が居なければ成り立たない作戦でもあるということだが、ここで俺はふと疑問に思った。……モルドは、俺達が居なかった場合はどのような反逆の計画を立てていたのだろう、と。
俺達とモルドが出会ったのはあくまで偶然の出来事のハズだ。あの時、ゴツガケ山脈の道中でアッシュ・タイガーが襲ってきたところをモルドが助けてくれなければ、この出会いは無かった。
よって必然的にこの作戦もまた俺達ありきの偶然の産物となるわけだが、それにしては俺達の立ち位置が重要すぎる気がする。もし予てより作戦を考えていたとすれば、このような役割に充てられるのは寧ろ彼ら国民の団体の方になるはず。それとも彼らと俺達の実力の差を考慮して急遽その役割を担うのが俺達に変更になったのか。だが、昨晩の会議ではそんなような様子は無かった。
……まあ、とは言っても仮にそうだとしてだからどうであるという訳でも無いのだが。余計な思考を働かせている時間はどの道もう無い。時の針はもうじき開戦の刻を指そうとしている。
俺は振り返って、仲間達に「準備は良いか」と最後の確認を行った。皆、それぞれの武器を持って覚悟に染まった瞳を俺に向けている。俺は頷き、再び前を向いてもう暫く時を待った。
そして、ついに……その時はやってくる。
「始まったか……!」
作戦の第一段階、両翼が城に奇襲を開始した。息を潜めながら城の裏口がある辺りを見下ろしてみると、右翼側の隊がお掘りに木の板を倒し即席の橋として架け、楽々と侵入しているのが分かる。
当然こんなことをすれば裏口を警備している数名の兵士にすぐに気付かれるわけだが、彼らが城内に敵襲を叫ぶ前に彼らは手に持っていたボウガンを連射して兵士達の息の根を止めた。
人々が殺し合っている様は見ていて吐き気を催してくる。俺達なら兵士達を峰打ちで気絶させられるだけの器量を持っているが、彼らのように一般人に近い実力しか持っていない者があの道を切り拓くには兵士達を殺すしか方法は無い。
残酷だ。これが国に対し反逆をするということである。王が邪悪なせいでそれに従う兵士達は恨みの巻き添えのように死んでいく。彼らにも家族がいただろうにと思うと、心が痛むばかりであった。
しかしここで涙ぐんでいる場合ではない。そう、俺達は反逆をしにきた。勿論俺達は兵士達をみすみす殺してしまうような真似はそうそうしないが、それでも兵士達ばかりに気を遣っては本末転倒。果たすべき目的を見失ってはならない。
そろそろ城内もだいぶ撹乱されてきた頃だろう。俺達の出番も間もなくといったところだ。俺達は突入するべく、満を持して物陰から城門へと移動を始めた。
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――闇夜にて戦火は舞い散る。反逆の狼煙は悪しき王にまで届くか。
「――≪根源の大爆発よ 今ここに再び巻き起これ≫」
「≪ビッグバン≫ッ!!」
ザザンガルド城正門。その分厚い鉄壁に巨大な風穴を爆風と共にこじ開けたのはイクシスが唱えた強力な爆発呪文だった。その爆発に巻き込まれた兵士達は悲鳴をあげながら左右に吹っ飛ばされる。今この瞬間、俺達の眼前を阻む者はいない。俺達はついに、ザザンガルド城内に突入した。




