「大地の剣」
「くっ!」
この俺を玩具にして楽しんでいる奴を、これ以上見過ごしてはいられない。
「≪大地の剣に従い 敵を穿つ弾丸となれ≫!」
ここで俺は、先ほどとはまた違う呪文を唱えた。剣先を前方に突き立て魔力を注入し、徐々に剣に魔法の岩を纏わせていく。
と、ここまではさっき唱えた呪文と同じだが、ここからが特異点。
「はァッ!」
俺は剣を床に向かって真下に思いっきり振り下ろし、纏った岩を衝撃を以て粉砕する。しかし粉々になった岩々は地面には落下せず、空中で漂い続けている。
この浮遊する岩こそ、この呪文の最大の武器だ。見るとこれらの岩は、それぞれ先端が非常に尖った形状をしており。その特性から刃の代用となり、その一つ一つを次に込める魔力で一斉に飛ばせば――。
「いけぇッ!」
――それらは逃げ道のない見事な攻撃網を形成し、敵を強襲する。この攻撃には殆ど隙が無く、手早く撃てるため非常に使い勝手が良い。そして威力も申し分ないときている。
まさにこれは、現地点における俺の最強の魔法だ。無数の岩の雨は、ファランクスに向かって次々と降り注いでいく。
「早いッ!瞬間移動では避け切れないか」
そう判断したファランクスは大剣を盾にし、迫りくる岩の雨から自らを守る。大剣が防護している範囲は非常に広く、ざっと見ても八割方の岩が無に帰しているのが分かる。
だが、命中している部分にはしっかりと傷を与えられているようだ。主に腕と足元に岩の切っ先が触れている。
「ぐぅ……ッ!」
この激しい痛みが、徐々に守りをこじ開けていくのだ。最初はそれほど効いていなくても、攻撃を受けている時間が長くなれば長くなる程、痛みによって守りの手はその意志とは関係なく弛んでいく。
「まだまだァッ!」
そこへ、更に追い打ちとして呪文を重ねて詠唱することで、終わらない棘地獄が始まる。
「≪大地の剣に従い 敵を穿つ弾丸となれ≫!」
重複する呪文。
「なるほど、中々だ……ッ!」
大剣の後ろで踏ん張りながらそう呟くファランクス。あのファランクスを防戦一方に持ち込めている。
追い込みは上々だ。あとはこのまま押し切ることができれば――。
「……しかし、貴様はまだ魔族の本領を発揮していない」
「結局その岩の弾丸は、貴様の所持しているその鈍が生み出したもの」
「貴様自身の魔法とは呼べない」
痛いところを突いてくる。そう……これらの岩魔法は、全て大地の剣であるグランの力を借りて行使しているもの。
俺一人では、この強力な呪文を扱うことはできない。グランの魔力と、俺という器が合わさることで初めて大地の呪文は生まれるのだ。
「言ったはずだ……我は貴様に期待していると」
「ふむ……そうか、その剣があるから貴様はその剣に頼るのだな」
「ならば――」
「――へし折ってしまおうか、そんなもの」




