アインさんが転生しました!
その日はなんて事のない日だった。
朝起きて、朝食取って、仕事に出勤して、仕事場に着いたらいつも通りデスクと睨み合う。休憩時間にはいつも通り同僚と他愛ない話をしながら近場のレストランで昼食。また戻って来たなら再びデスクワーク。
そしていつも通りの残業、隣の同僚がこのブラックめと文句を垂らしながら机の上のパソコンと向き合い、どうにか次の日を迎える前に終わらせた。
そんないつも通りの帰りの終電ギリギリの電車。
これもまたいつも通り………にはならなかった。
終電なだけに人は疎らだ。
椅子にもたれかかって眠る者、誰もいないことをいい事に座席をベッドがわりに眠る者、端でイチャつくカップル、はたまた今の俺の様に仕事帰りの者もいる。
そんな俺も最近の残業続きでかなり疲労も溜まり、こと居眠りする人達の仲間入りしようという時にそれはおきた
仕事疲れで眠気眼の俺を突然の大きな揺れが覚醒させた。
大きな揺れは更に大きくなり、やがて世界が一気に傾き俺やそこにいた人達共々電車の勢いのまま宙を舞う。
誰も状況を理解できないままぐしゃりと生々しい不快音と共に俺の視界は真っ暗になった。
(く、苦しい…)
まるで海の底の様に光ない世界を溺れるようにもがき苦しみながら何処ともつかない方向へ手を伸ばす。
一筋の光すらない、苦しい、死にたくない
必死に、必死に、もがき、抗い、されど何もない暗闇
それでも生きたい必死に手を伸ばし
何かを掴んだその瞬間
俺は目を覚ました……
「ふぁ〜……」
暗がりのこの穴蔵の様な場所で目を覚ました。
大きな欠伸と"前足"を突き出し背を伸ばす。
重い瞼を頭を振って払いながら"後ろ足"器用に耳の後ろを掻く。
寝床代わり葉で作り上げたベットから降り日の光のある方へとおぼつかない足でふらふらと歩みを進めた。