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ブウィスキー


 「神とか妖獣とか、いわゆる霊的存在とされる奴らは、気持ちを込めにくい武器はあんまり効かないんだ」

 「でも、戦ったら星が砕けかねないんですよね?」

 「うん、奴らの攻撃は物理的にも作用するんだ。ずるいよね」

 「本当ですね」


 三輪は頭を抱えた。


 「で、三輪さんどうする?」

 「……まあ、ゴッドさんに報告ですね」

 「お、ブタ酒場行くの?いいなあ。あの店、入れないんだ。ブタしか入れない結界張ってるし。……まあ、結界壊せるけど」

 「……僕はなぜか入れますがね」

 「……入れるんだ」

 「……入れますね」








 「いらっしゃいまし」


 ブタ酒場Tonのドアを開け、三輪は店にはいった。


 「マスター、ゴッドさんは?」

 「今日はまだですが、いずれいらっしゃるでしょう。この店を始めた晩から、必ずいらしています」


 マスターは、三輪へ酒の入ったグラスを渡した。


 「あっ……、ええと、ちょっとそろそろ生活費がですね……あはは」

 「なに、ある時でかまいませんよ。私たちブタには、本来金は不要ですし。それに……失業中もきちんと払う三輪さんになったら、結界にはじかれるかもしれません」

 「ゲフッ!」


 三輪は咳き込んだ。しばらく「ゲホ」だの「グフム」だのとやっている。


 「ああ、すみません。ニンゲンの世の中で暮らしてる三輪さんには、失礼でしたね」

 「いや、大丈夫です。ああそうだ、結界って一時的に消せたりしますか?」

 「ええ、可能です。どうしました?」

 「今回、ピピカドラグィラルの調査に協力してもらっている卜部さんが、一度来てみたいと言ってたんですよ」


 マスターは眼を見開き、一時動きを止めた。しばらくした後、店の奥に入り酒ビンを一本持ってきた。ラベルには「黒豚」と書かれている。


 「卜部さんというのは、卜部翠隼さんですね?」

 「はい、そうです。知り合いですか?」


 マスターは、持ってきた酒を注いだ。


 「ええ、私の恩人……恩鬼?です」


 マスターは酒を三輪に渡した。


 「今夜は、ごちそうさせて下さい。それと、卜部さんは結界を通り抜けられます。是非、連れていらして下さい」



 グワッ……バアン!


 「ぶふぃ!今夜も来てやったぜ!」


 目付きの悪いブタにしてブタ族の神、ゴッドが店に入ってきた。


 「ぶっは!?そ、そのブウィスキーはまさか……『黒豚』!?」

 「いらっしゃいまし。ゴッドさんもいかがですか?」

 「ぶふぃ!やったぜ!」


 狂喜乱舞するブタがいる。くるくると回りながら移動し、席についた。

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