ブウィスキー
1
「神とか妖獣とか、いわゆる霊的存在とされる奴らは、気持ちを込めにくい武器はあんまり効かないんだ」
「でも、戦ったら星が砕けかねないんですよね?」
「うん、奴らの攻撃は物理的にも作用するんだ。ずるいよね」
「本当ですね」
三輪は頭を抱えた。
「で、三輪さんどうする?」
「……まあ、ゴッドさんに報告ですね」
「お、ブタ酒場行くの?いいなあ。あの店、入れないんだ。ブタしか入れない結界張ってるし。……まあ、結界壊せるけど」
「……僕はなぜか入れますがね」
「……入れるんだ」
「……入れますね」
2
「いらっしゃいまし」
ブタ酒場Tonのドアを開け、三輪は店にはいった。
「マスター、ゴッドさんは?」
「今日はまだですが、いずれいらっしゃるでしょう。この店を始めた晩から、必ずいらしています」
マスターは、三輪へ酒の入ったグラスを渡した。
「あっ……、ええと、ちょっとそろそろ生活費がですね……あはは」
「なに、ある時でかまいませんよ。私たちブタには、本来金は不要ですし。それに……失業中もきちんと払う三輪さんになったら、結界にはじかれるかもしれません」
「ゲフッ!」
三輪は咳き込んだ。しばらく「ゲホ」だの「グフム」だのとやっている。
「ああ、すみません。ニンゲンの世の中で暮らしてる三輪さんには、失礼でしたね」
「いや、大丈夫です。ああそうだ、結界って一時的に消せたりしますか?」
「ええ、可能です。どうしました?」
「今回、ピピカドラグィラルの調査に協力してもらっている卜部さんが、一度来てみたいと言ってたんですよ」
マスターは眼を見開き、一時動きを止めた。しばらくした後、店の奥に入り酒ビンを一本持ってきた。ラベルには「黒豚」と書かれている。
「卜部さんというのは、卜部翠隼さんですね?」
「はい、そうです。知り合いですか?」
マスターは、持ってきた酒を注いだ。
「ええ、私の恩人……恩鬼?です」
マスターは酒を三輪に渡した。
「今夜は、ごちそうさせて下さい。それと、卜部さんは結界を通り抜けられます。是非、連れていらして下さい」
グワッ……バアン!
「ぶふぃ!今夜も来てやったぜ!」
目付きの悪いブタにしてブタ族の神、ゴッドが店に入ってきた。
「ぶっは!?そ、そのブウィスキーはまさか……『黒豚』!?」
「いらっしゃいまし。ゴッドさんもいかがですか?」
「ぶふぃ!やったぜ!」
狂喜乱舞するブタがいる。くるくると回りながら移動し、席についた。




