鬼界
1
「卜部さん、グィグィラゲヴァーンに会いたいんですが、どこにいるかわかりますか?」
「うん、半島の方じゃないかな。ニンゲンが戦で汚染した大地を浄めに行ってると思う」
「そうですか。さすがに海外へ行く交通費はないし……」
三輪は頭を押さえた。
「ああ、グィーさんに結界頼もうと思ってたんだ。確かに、グィーさんが張る結界なら丈夫だね」
「ええ、そうだったんですよ。……他にピピカドラグィラルが暴れても被害が出ないような、そんな結界を張れる方に心当たりはないですか?」
「パッと思い付くのは数名いるけど、グィーさんほど優しくはないから、なんとかグィーさんに頼んだ方がいいよ」
「……人類滅ぼそうとした邪龍より優しくない、でも匹敵する実力者が数名いるんですね」
三輪の顔が青ざめた。
「いやいや、グィーさん優しいからね?確かに、時々『人類ナド、滅シテクレルワ』とか言ってるけど、一回も滅ぼしてないから」
「…時々言ってるんですね」
「時々言ってるねえ。今回もニンゲンの戦争で土地が汚染されたことを知って『アイツラハ、我ガ何度浄化シテモ繰リ返シ土ヲ汚ス、モウ許サン!』とか言ってたね。でも、赤ん坊が這ってるのを見て『……コノ者ニ罪ハナイカ』って冷静になってたよ」
「あー、つまり土の守護者として頑張っているのに、ニンゲンがちょくちょく土壌汚染して、後始末を毎度毎度やってて嫌になってるだけで、本当に人類滅ぼしたいわけじゃない……ですか?」
「そうそう、そんな感じだよ」
卜部はニコニコと頷いた。
「だからやっぱり、頼むならグィーさんだね。他はオススメ出来ないなあ」
「……さっきも言いましたが、交通費がないんですよ」
「しかし、いま同じ陸地にいそうな強い結界張れるのは……闘鬼の羽田淳か、迷軍基地のヤンドル大佐、妖獣革命党の人達あたりだよ?」
三輪の顔は、先ほどより更に青ざめた。
「……」
「誰に頼んでも、暴走してさらに大事になりそうだよね」
「……そうですね」
「それに、交通費かけずに行く方法があるよ」
「……一応言っておきますが、僕は海の上を走ったり出来ませんからね」
2
くゎくゎくゎくゎくゎ
くゎくゎくゎくゎくゎ
三輪と卜部は、夜道を歩いていた。周りには丈の高い草が繁り、蛙の鳴く声が聞こえた。吹く風が暑いためか、三輪は汗を流している。
「いやー、夏だねえ。何時きても、夏だねえ」
「そういう世界ですからね」
くゎくゎくゎくゎくゎ
「蛙が鳴く声を聞きながら夏の夜道を歩くのは、いいねえ」
「ええ、幸せな感じがしますね」
「この鬼界は、長野さんの結界の様なモノだったよね」
「そうです。……長野さんが引き籠っていた世界です。永遠に続く夏の夜の草原、鬼女の長野紅葉さんがいた世界です」
「そうか。いた世界なんだね」
「……ええ」
二人……正確には二柱の鬼は、それからしばらく何も言わなかった。
夏の夜風が、草の葉をならしていた。
今回名前だけ出てきたやつらは、それぞれ別の物語の登場人物です。本作品を長く続けられれば、今後出てくるかもしれません。もしくは、ピピカドラグィラルが完結してから彼らの物語を投稿するかもしれません。




