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2 教義院
彼が暗く沈み往く夢の中、まだ朝は始まったばかりだったし、鏡の音を伐るのは名誉の戦場だけだった。世界は人間なしにはじまったことを、彼は知ることもなかった。聖アウグスティヌスの「告白」を片手に彼は地を歩き、空を飛び、そして雪よりも白く、光よりも眩しい神となった仔の十字架が教義院に掲げられていた。教義院では教義院長が祭壇で新約聖書のヨハネによる福音書を朗読していた。「初めに言葉があったのです。そして人は言葉による集合体なのです」と、教義院長は信徒に話した。教義院長の後ろには祭壇画が飾られていた。中世の秋を彩った画家の絵を見に彼は訪れた。教義院長は信徒を前に説教を続けた。「トーマス・カーライルの我が英雄主義最後の物と呼んだものは何かね?」と云った瞬間、彼以外の人が塩となって消えた。そして白い空間が現れた。
「我々には二つの道があるのです。すなわち、個を捨て群となるか、群を捨て個となるか? あなたはどれを支持しますか?」
教義院長は彼に対して言葉を突き付けた。
「私たちはアダムの息子で、イヴの娘なのです」




