現実
寒くなってきましたね。
そういえば南極と北極では南極の方が格段に寒いそうですね。
ナンダコレハ???
突然鮮やかな光に包まれたのだ。
「うわっ」
「きゃあ」
意識が遠のく。
『やばい・・・気絶って、あいつら何したんだよ』
「ヌベルス様。文献通り、本当に彼らが現れました。」
深刻そうな顔をした男が叫ぶ。
「なんと・・・。まさかとは思っていたが、本当に。」
「文献には、未来の地球人に人を送ると書いてありました。
未来の地球を浄化するためにと。」
王と呼ばれた男の眉間にシワができる。
「これは、長年数々の学者が研究してきた。
他の迷宮との情報から導き出されたのは、過去の地球人達が未来の地球を乗っ取ろうとしているのではというところで落ち着いておる。
もしかすると違う解釈もあるのかもしれんが・・・」
「不安の芽は摘んでおきますか。彼らは地下牢へ。後日処刑を。」
「いや。待て。」
「なんでしょう」
「女は男奴隷の部屋に入れておけ。
支配者になりにきたのかもしれんが、未来の我々を甘く見ていたことを思い知らせてやろうではないか。」
王がにたりと笑った。
ぽちゃん。
水の垂れる音。
ぽちゃん
うるさいな
ぽちゃん
ジメジメした空気が僕をさらに不快にさせる。
ん?
あれ?昨日どうやって帰ったんだっけ?
はっ
目を開けるとそこは暗く、不潔な石造りの部屋だった。
「目が覚めたようだな?」
「え?うわっ」
暗い部屋に白髪で、ヒゲの長い男が立っていた。
「ど、どなたです?」
男はニヤリと笑う。
「まぁ、そんなに怖がるな。 これから同居人になる中だ。よろしく頼むよ。」
男は恭しく手を胸に当て、貴族風の挨拶をした。
想定していなかった状況に混乱する。
「えっと。お名前は・・・じゃなくて、ここは何処なんですか?」
男は面白そうに目を細める。
「まぁ、待て。順を追って説明してやる。
おれはベルン。この国の研究者をしていた。
迷宮専門のな。やり過ぎて投獄されたが。
そしてここはヌベルス王国だ。」
『何を言ってるんだ?俺はDQNにイタズラされたんじゃ・・・?
そもそも・・・』
「ヌベルス?そんな国あります?
ていうか、僕は日本にいたんですよ?
そんなよくわからない国まで到達できるほど気絶していたとも思いませんし」
「は?」
え?
「何を言ってるんだ。気絶?
自分の意思でここにきたんだろう?」
男が苦笑いしながら言う。
「いや、気づいたらここに・・・」
男が急に真顔になり、俺の肩をつかむ。
「本当か??お前は意図的にこちらにきてはいないのか?」
「はい。そうですけど・・・」
男が後ずさりしながら天を仰ぐ。
「くっ。何て事だ」
男の足の鎖がじゃり と嫌な音を立てる。
「どうしたんですか?
もしかして、新興宗教の方ですか?
っていうか顔と言語のギャップが凄いです。
日本語お上手ですね」
「・・・・・・?
日本語ってなんだ?」
「え?今喋っている言葉ですけど?」
「あー。共通語か?」
「共通語?」
「ああ。どの国のやつもこれで話すんだよ。」
「へ、へぇー(何言ってるんだろう、この人。怖い)」
「じゃあ、よかったら何があったか聞かせてくれ。」
怪しい風貌だが、これくらい大丈夫だろうと経緯を話す。
「ってことは冤罪か。」
「は?」
男は深刻な顔をする。
「いいか?ここは恐らく君の生きていた時代の数万年後だと考えてくれ。」
「え?」
「どういうことですか?」
「俺にもよくわからない。ただ文献に今日遠い時代の人間が飛ばされてきて、この世界を浄化すると書いてあった。
それがどういう意味なのかは長年研究されてきたが、恐らく過去の文明が発達により戦争が起こり、荒廃した過去の人類がこの時代を乗っ取るのだろうという結論に至った。」
「成る程。だから、」
「その通りだ。つまり、君は冤罪だ。明日死刑になるらしい。女の子は奴隷部屋に。今頃気が狂ってるかもしれないな。」
「は?」
「知り合いだったのだろう。残念だったな。」
「処刑・・・」
「まぁ、そう気を落とすな。
私も明日が処刑なのだ。
最後の時を楽しもうぞ。」
「え?いや、困りますよ
助けてください! 僕はただ家に帰っていただけなんです!!!」
キィー
背の高い、筋肉質の男が鉄格子を開け、中に入ってくる。
「これは何なんですか!!
これ以上拘束したら訴えますよ!!」
「騒ぐな!」
看守らしき男は釘のついた鉄の棒を持っていた。
「は?」
バキッ
「ーーーーーっ??ああぁぁぁぁぁぁぁあ!!」
左腕はだらりと下がり、血がポタポタと垂れていた。
「騒ぐな!!」
バキッ バキッ
看守は容赦なく棒を振り下ろす。
「い??僕は!」
「黙れ!!!!」
バキッ
キィー
男が出て行く。
「ヒュー、ヒュー」
声を出そうとしてもでなかった。
ここで僕は理解したんだ。
これは、DQN達のイタズラではなく、ドッキリでもなかったということ。
法律や常識が通じない奴等に拘束されているのだということ。
そして明日殺されてしまうのだということを。