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急、浮遊霊

 雄叫びをあげる黒いのに対し、私は紙筒を構えておく。

 紙筒は紙筒。

 横からの衝撃にはもろい。

 攻撃出来るのは縦、突きだけだ。


 狙いをつけて


「やめんか!やめんか!争う気は毛頭ない!」

「あ、これ。私、ここにいる元凶じゃないですか!」

「ふーん」


 やはり敵認定で間違いはない!


「変わりたくてここに来たのだろう!

 我は手伝っているだけだ!」


 黒いのがなんかまた喚いてる。

 これが資料室の謎の正体ですか?


「信じちゃダメですよ!

 変わるじゃなくて代わるですから!」

「ちゃんと変わっているだろう!成りたい自分に!」


 うん?とりあえず敵でおーけー?


「構えを深くするでない!

 ってどこを狙っているんじゃ!」


 みぞおち。


「なんじゃ、この恩知らずの浮遊霊め!」


 黒いのが私を指して言った。


「え?」


「じゃから、恩知らずの浮遊霊じゃ!

 お主は死んでその女性の体に入っているだけじゃ!」


「私ってもしかして死人?」


「そうじゃ!」


「じゃあ、この体に入っていた元の女性は?」


「どれじゃったかな?

 今回は来ている浮遊霊が多過ぎてよくわからんが、たぶんそこの女性じゃな」


 黒い指が指すのは鏡さんでした。

 鏡さんはその指先を見て、鏡さんは鏡さんの人差し指を鏡さん自身に向けた。

 なんかきょとんとしている。


「あー、その奥、その奥。

 君は次にその体に入る候補の浮遊霊じゃ。

 ほら、奥の方で布団敷いて寝ているそのグータラが元の女性じゃな」


 鏡さんの奥、資料室の部屋が写る中、棚の上(!)で布団敷いて寝ている女性がいた。


「え、アレ?!」


「人間関係に疲れてもう眠りたいというから、働きたい働きたいと叫ぶお主が選ばれたかの」

「……なんと」

「お主は今回、仕事重視で人間関係が希薄過ぎて嫌になったのだろう?

 じゃから今度は感情豊かで人間関係を築いた経験の多い浮遊霊を選んできたのじゃ!」


 なんか黒いのドヤってる。


「いやいや、それ、根本の解決になってないから!」

「え、お主、もう生きるの嫌なんじゃろ?」

「いやいや、生きたいですよ!」

「でも人間関係が希薄で生きているのはツラいんじゃろ?」

「まぁ、それは」

「なら問題ないじゃろ」

「いやいや、問題ありまくりだから!

 それ、結局、私死んでいるのと変わりないから!」

「霊の性格変えるくらいならいっそ入れ替えた方が早いんじゃ」

「入れ替えるなし!」

「記憶は身体に依存するから問題ないじゃろ」

「それなら……って言えるか!」

「注文が多いのー」

「そんな話聞いたら文句つけるわ!」

「しゃーないの」

「そういう方法で性格変わるなら勘弁です!」

「そかそか。んじゃ、ほれ、今日のところは帰ろか」

「帰れ!帰れ!」


 黒いのは箱の中に入ると一言。


「呼んどいて帰れとは全くひどい話じゃ」


 などと言っていた。


 性格を変えると言われ魂を入れ替えられるのはたまったもんじゃない。

 しかも不意打ちを仕掛けて魂を入れ替えようとするとは手慣れている。

 もし不意打ちが成功していたら気づく前に魂が変わっていたのだろうか。

 だとしたら今後性格が変わった人に出会う度に考えるのだろうか。


 この人はもしかして魂丸ごと入れ替わっているんじゃないかって。

 私みたいに。






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