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破、怪異との邂逅

 理想の自分とはなんでしょうか?

 私は友人がいて人間らしい自分ですね。

 今の私には友人らしい友人はいません。


 鏡さんって挙動不審だ。

 何かに恐がるかのように始終視線を彷徨わせている。

 臆病者なのだろうか。


 衝撃の遭遇から数瞬後、開始のような怒涛のメモ帳への書き込みはなくなった。

 しかし反転して我に返ったような顔をすると急に視線が合わなくなり、今では顔を赤くして横を向いたり落ち着かない様を見せる。

 人見知りが激しいタイプなのだろうか。


「貴女はなにに怯えているんですか?

 状況に混乱しているのは分かりますが落ちついてください」


 何か言いたいような目でちょっと私を見つめるとすぐに目を離し避けてしまう。

 なんだかもどかしい生き物ですね。

 鏡の中の人じゃなければ回り込んで目を見つめてみたい。

 たぶん顔をそらして逃げていくんでしょうけど。


「そんな風に黙られてしまうと何も分かりませんよ。

 メモ帳に何でもいいので書き込んでください。

 思考がまとまらないならまずは単語だけでも書き込んでください」


 私は出来るだけ穏やかに、ゆっくりと一音一音しっかりと話しました。

 イメージは陽だまりの縁側でネコを撫でる白髪混じりのおばあさん。

 ……私にはまだ白髪なんて生えてませんよ?

 生え際を見つめたり、白いモノを探そうなんて思わないでくださいね?

 ここに乙女のアラを探そうなんて思う方はいないとは思います。

 ですよね?みなさん?


 鏡の中の人の視線の行く先を追うとそこには必ずビーカーなどのガラスがあった。

 そしてその中には思い思いの顔をしている私の姿が……。


 なんか増えた。


 なんか増えた。な……なんか、増えたん!とても増えたん!


 初めの鏡さんをビクビク、目を細めて口角を上げたニヤニヤ、ずっと笑い続けているケラケラ、ゲラゲラ、他の人と目が合えばにらむツンツン、トゲトゲ、ギラギラ。

 他にも多種多様な私の顔が見える。

 違いを違いととらえるなら同じ感情を示す表情はなさそう。


 私の百面相はこういう風に映るのか。


 私はスマホを構えて写真を撮る。


 これで表情の練習がやりやすくなるね。

 お手本が私の顔だから……。


 スマホの写真にはただのガラスしか写っていなかった。


 ふと視線を鏡に戻すとメモ帳に書かれた言葉が目に入る。

 血の気の引いた顔でメモ帳を鏡に押し付けていた。


「姉さん!後ろ後ろ!」

「誰が姉さんだ、誰が」


 こういう時はとりあえず何もない横に避けつつ


 バタムッ!


 後ろを振り返ると箱が倒れてきていた。


 箱からは黒い物が出てます。


 なんですか?なんだか手のような……


「セーフ……!」

「書くの早いな!」


 野球の審判のようにセーフのポーズをしていた鏡さんがテヘペロVサインをかましてきた。


 いや、それはさておこう。


 この箱は何なんだろう?


 資料室にあった紙筒でちょいちょいと黒い手を突く。


「あ、やめ、やめ、やめ」


 箱の中から声が響く。

 なんだか若い女性の声だ。

 ただしなんかかんに障る。


 黒い手を強く突く。


「やめんか!この寂しがり屋!」


 箱を跳ね上げて中身が出てきました。







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