序章
はじめまして、咲妃と申します。
頑張って連載していこうと思いますので、『キラ 〜輝けるもの〜』をよろしくお願いします。
「ねえ、どうして人は死んじゃうの?」
それは、まだ幼い頃のこと――……。
早くに両親を亡くし、自分たちを育ててくれた祖母の膝の上で、何気なく問いかけたことがあった。
横では、妹がスヤスヤと気持ちよさそうに寝息をたてている。
「っ!」
自分の問いかけに、祖母は驚いたようだった。
髪をやさしくなでてくれていたその手も止まる。
「おばあちゃん?」
だがその頃の自分は、祖母がどうして驚いているのかわからなかった。
そのぐらい、自分は何も知らない幼い子供だったのだ。
「どうか、したの?」
上を見上げてみれば、祖母がわずかに目を見開き、固まっていた。
そのことがとても不思議に思えて、自分は祖母の膝の上で首を傾げた。
祖母は、その声にハッとしたようだった。
だが次の瞬間には、いつものやさしい祖母に戻って、その顔をくしゃくしゃにする。
「ううん、何でもないよ」
自分の髪をなでてくれながら、目尻のしわをさらに深くする祖母。
その顔は笑っているようにも、泣いているようにも見えた。
「どうして、人が死んでしまうのか。きっと、それはねえ……――」
祖母は、どこか遠くを見るような眼差しをして、自分に囁きかけたのだ。
しかし今はもう、祖母が何とこたえたのか覚えていない。
そしてそれは今の自分にとって、さほど重要なことではなかった。
この世界には、魔導士とよばれる者たちが数多く存在している。
彼らは分野を問わず、あらゆる面で多大な影響を及ぼしていた。
魔導士とは、今やなくてはならない存在なのだ。
しかしその裏で、魔術をよからぬことに使う輩が少なからず存在することも、また事実なのである。
そういった者は、あとをたたない。
そのため、魔導士には厳しい掟が定められていた。
それらの項目は、三十項目以上に及ぶという。
第一条
一度死した者の其の魂を現世によび戻すこと、如何なる理由をもってしても、これをここに禁ず。
これ即ち、最大の禁忌なり。