プロロローグ
キーンコーンカーンコーン
本日最後の授業であるLHRが開始を告げるチャイムが鳴り響いた。
私立明和高校ではいつも最後の授業では、その日や昨日の出来事などをクラスの友達と話し合う。という、よく解らない伝統行事があった。
その為、LHRが始まる前に仲の良い友達同士で机を合わせ、チャイムを待つという行動が、男は泣いてはいけない。または女は化粧をしなくてはいけない。または給食の残りはクラスのボス猿たけし君のものだ。など、いつの間にかできた暗黙の了解になるのもまた至極当然だった。
クラスの3バカと陰で噂されている、明智恭介。周防哲平。浅井誠司もまた例外ではなかった。
担任の野田まちこ(39歳独身)はいわゆる適当なタイプの人間で、いつものように「じゃ、適当に始めちゃって」と一言残し、教室を後にした。
「はぁ~あ、高校二年にもなって毎日毎日何を話せば良いっていうんだろうなぁ?」
誠司は気だるそうに二人に問いかけ、呼応するかのように恭介は応えた。
「まぁさすがに俺らは小学生から一緒だからな、、、話題という話題はもう無いな。」
哲平はうんうんと頷き、誠司は「だよなぁ」と呟いた。
それでも暇をもて余した彼等は何かないかと考えていると、誠司が思いついたかのように手を上げた。
二人は「授業かよ」とツッコミつつ誠司の話を聞いた。
「なぁ、明後日から夏休みだろ?そこで、、、だ。いい遊びを思いついたんだが」
最早本来の伝統行事とは全く関係ない話になっていたが、二人は<いい遊び>というフレーズに反応し、身を乗り出した。
「俺らさぁ、ずっと男同士で遊んでたっていうのもあるけど、高校二年にもなって彼女の一人もいないじゃんか?」
「うるせーよっ、健全な高校生じゃねぇかよ!」
「さりげなく言い訳も入ってるしね。」
恭介と哲平のツッコミを無視し、誠司はどや顔で言い放った。
「だからさ、次の二学期まで、つまり夏休み中に彼女を誰が一番早くできるか勝負しようぜっ!」