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ウェイド王国史 -時ー  作者: そこら辺にいる一般人えー
極光の主
33/38

灼熱5

「偵察部隊からの報告が入りました。

 道程三日ほどの距離には敵の影は認められずただ平野に街道が通っているだけとの事。道中小規模の農村などがある程度ですが制圧されていた地域と同様守備の部隊の姿は見られずとの事です」


「そうか。

 ならば直ぐに偵察部隊の下に戻り本隊と合流するように伝令してくれ。尚少数で地形の把握だけは実行せよとも」


「了解です」


 国境を超えて二日の昼。

 先行して国境を超えて偵察に出ていたディン達の部隊から経過を報告する伝令が進軍を続ける本隊の下に到着していた。

 伝令は偵察で入手した情報をラルフに報告し、それを聞いたラルフは頭の中でそれらの情報を吟味しつつ伝令に新たな指示を下し直ぐに偵察部隊の下へと戻らせる。

 得られた情報から推察するに敵は小さな農村などの細やかな拠点は完全に放棄してある程度の拠点か迎撃に都合の良い箇所での迎撃戦を望んでいるのがありありと理解出来る。まあ何より細かな村などは下手に防衛して備蓄されている食糧などを減らしたり戦闘によって被害を出して民衆の反感を買うよりも明け渡して無傷で奪還するというのが最も望ましい形でもあるのでそういった意図もあるであろう。

 ラルフは改めて自軍の情勢を思い返す。先程の戦闘により三万の軍勢が二万四千弱ほどにまで減少しており自国から離れる以上当然後方から運ばれてくる補給の到着にも時間がかかり無駄な浪費は避けたい情勢だ。対し相手は潤沢な補給も可能であり大規模な街などでは民衆の暴動なども予想され、戦後の統治の事を考えると手出しする事が難しいのが悩み所である。

 

「今後を考えると次の一戦の被害次第では一時撤退も視野に入れるべきでありましょうか」


「妥当といった所であるな。

 だが第二が合流すればあちらにその後の制圧を任せ我々は全体で遊軍に回るといった手も取れよう」


「なればこそ次の一戦が鍵です。灼熱が出てくれば甚大な被害が発生するのは確定事項としか言いようがありません」


 思考に没頭しているラルフに側近の騎士が提言をする。

 ラルフは彼の言葉を聞くと頷きながら同意し、別ルートから侵攻を開始しているであろう第二混成騎士団との合流までもを視野に入れて考えている事を側近に伝えた。

 側近はラルフの考えを聞くと同意しつつも念を押して待ち構えているであろう灼熱の軍勢への警戒心を顕にする。


「・・・・・・クロウディアを此処に来るように伝えろ」


「はっ」


 意見を決めかねるのであれば第三者の意見を取り入れようと考えたラルフは側近にクロウディアを呼ぶように伝えると再度思考に没頭し始める。側近はラルフの思考の邪魔にならないように小声で返礼をすると伝令を手配しクロウディアの下に走らせた。


「クロウディア殿、団長がお呼びです」


 伝令が出てから十分ほどが経過した頃、ようやく伝令はクロウディアの下に到着した。軍の後方に展開していたクロウディアの部隊へ辿り着くのに時間がかかったからだ。

 その報告を聞いたクロウディアは分かったとだけ返事をすると少し後ろで和やかに会話しているバーンとレナに声をかける。


「すまないが団長の所に顔を出してくる。

 まだ接敵していないから良いがあまり公然といちゃついているんじゃないぞ」


「ば、馬鹿いってんじゃねえよ!」


「ふふふ・・・・・・いってらっしゃい」


 突然からかいの言葉を向けられたバーンはびくりと体を震わせて大声で言い返し、レナは歳が歳だけに余裕の微笑を浮かべながらクロウディアを見送った。

 長蛇の列を成している軍勢の列の中を馬を駆けさせ駆け抜ける。道中見る兵達の顔には朝からの行軍の疲れが徐々にだが見受けられるようになっていた。いつ襲撃を仕掛けられるかも分からない緊張の中での行軍でもあるのだ、無理もない。

 クロウディアはどんどんと列を進み次第に軍の前方のやや中軍よりに居るラルフが居る本陣へと辿り着き、馬上で思考に没頭しているラルフを見つけるとそれに併走するように馬を並べラルフに声をかけた。


「団長、何用ですかな?」


「おお、来たか」


 ラルフはクロウディアが来た事に気付くと思考を中断し顔を向ける。クロウディアは軽く一礼するとラルフに話を聞くべく口を開く。


「お呼びとの事でしたが」


「ああ。

 実はこの先での敵の出方だがお前の見解通りになりそうになってきた。この先に点在する村などには守備部隊もなにも居ないらしい」


「・・・・・・ならば灼熱も現れる率も格段に高くなるでありましょうな。

 彼の者が率いる軍勢を打ち破れば皇国も切迫してくるはずです。後が無い以上熾烈な抵抗は避けられないかと」


 ラルフから話を聞いたクロウディアは直ぐに話を察すると率直な意見をラルフに返す。その意見を聞いたラルフはまた黙って思考に没頭し始める。

 その様子を見たクロウディアは視線をずっと続く街道の先に向ける。地平線に向かってずっと伸びていくその道の先に待ち構えている灼熱の軍勢と、龍騎士たる灼熱。

 ドクン、と力強く脈打つ巨大な鼓動がクロウディアの頭の中に響き始める。今にも体を食い破って出てくるんじゃないかと思えるほど巨大なその鼓動はゆっくりと、だが確実に続いていく。

 されどその鼓動は強大にして凶暴という訳ではない。むしろ強大ながら優しさすら感じ取れる穏やかさすら感じ取れる。クロウディアはその鼓動に一つ深呼吸をすると心を落ち着かせ始める。

 するとそれに呼応するように巨大な鼓動は徐々にだが収まり始め、次第に感じ取れなくなっていく。それを感じ取ったクロウディアは一つ息を吐くと再度ラルフに視線を向けた。

 向けられた視線に気付いたラルフは思考に耽るのを中断し、クロウディアに慰労の声をかける。


「すまん、ご苦労であったな。

 私と側近の意見だけでは少々判断しかねる所であったのだ。よって先の軍議で限りなくこの状況を推察したお前の意見も少し聞いておきたくてな」


「お役に立てたならば幸いに。

 それでは私は部隊の方に戻らせて頂きます」


「うむ」


 クロウディアはそれを聞くと一礼し、断りを入れてから馬首を巡らせて後方の自部隊に戻る始める。

 ラルフはその言葉を聞くと手短に返事をし、最後に一礼して去っていくクロウディアの背中を暫し見送っていた。

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