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ウェイド王国史 -時ー  作者: そこら辺にいる一般人えー
極光の主
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開かれる戦端3

 クロウディアが率いる部隊が魔法と矢が往来し血飛沫と断末魔の悲鳴が飛び交う戦場へと行軍を開始する。まず目指すのは敵の重歩兵を支える援護を敢行している魔導師の居る両翼の部隊。その右翼目掛け地獄の猟犬の如き勢いを持って大地を疾駆するその軍勢は地獄から這い上がってきた死神の群れを連想させた。

 ハーベル皇国軍もクロウディアの部隊の襲来に気付いて応戦を開始する。空を朱に染め上げる程の紅蓮の火球が右翼から飛来し、右翼を補佐するために左翼、重歩兵の後方に展開する中軍の魔導師達からも氷の塊や石の飛礫がどんどんとウェイド王国軍に向かい射出され続ける。何騎もの騎兵がそれを受けてどんどんと落馬し戦場にその命を散らしていく最中クロウディアは右翼の敵が自らの魔法の射程圏内に入ったのを目視すると口角を吊り上げて一気に詠唱を開始する。


「輝き、駆け穿て【ライトニング・ブラスト】」


 クロウディアが使用したのは雷の属性に属する第三位魔法。その中でもとりわけ殺傷能力が高く効果範囲が広い雷の鞭を前方向に向かい放出する魔法だ。当然威力と効果範囲が広いだけあって魔力の燃費も第三位魔法に位置付けられながら下位の第二位魔法をも凌駕する。だがこういった戦況では欠かす事も出来ない殲滅特化の魔法だ。

 詠唱が完了すると共にクロウディアの目前に青白く輝く魔方陣が展開され、その陣全体からバチバチと音を立てながら稲妻がこの戦場に顕現する。そしてカッっと眩い稲光を発すると共にその魔法は陣から放たれハーベル皇国軍に襲い掛かった。

 バリバリと空気を震撼させハーベル皇国軍の右翼に襲い掛かった雷は魔導師を守るように展開していた歩兵や騎兵達を容赦無く飲み込み、その紫電の迸りを持って焼き払っていく。装備していた鎧も上位の騎士や将軍といった立場でないので抗魔処理などされていないただの金属製の鎧であった事も災いし、凄まじい速度で皇国の部隊を薙ぎ払っていく。肉の焼け爛れる臭いが戦場に充満し始め、その臭いは嗅いだだけで激しい嘔吐感を齎す。

 そして雷は皇国の歩兵や騎兵の壁を突破し魔導師達へも等しく牙を剥く。対応出来た者は咄嗟に魔法障壁を展開し襲い掛かる雷に対抗し始めるが対応が遅れた者はそうはいかない。魔法障壁の展開が甘かった者は僅かな拮抗と共に陶器が砕けるような音と共に魔法障壁が破壊され、雷にその身を焼かれていく。障壁すら展開出来なかった者は一瞬でその命を雷の稲光に飲み込まれこの世界からその意識を一瞬でこの世界から消失させていった。

 魔法障壁を展開させた者達はその光景を見てぶるりと身震いし背筋に冷や汗が流れるのを感じる。速射性を捨ててまでただ殺しに来るその姿は明確な殺意を感じざるおえないからだ。展開された障壁はぎしぎしと音を立てながら悲鳴を上げては居るが破られる様子も障壁の構築にも異常も見られない。これに耐え切りこの雷を放った敵の部隊の隊長と思わしき男を殺せば、そう考えていた時にそれは起こった。

 当然ハーベル皇国軍にも同じ魔法が使える者が居り、もうそろそろ魔法の照射も終了する筈だという事を知っておりそれはすぐさま魔導師全員に伝えられていく。それに合わせ反撃用の魔法の詠唱を小声で口ずさみ、後は発動の魔力を供給しようかと言う状態だった。あと少し、あと少しと思いながら雷に必死に堪える魔導師達を嘲笑うかのように雷は途切れる事無く襲い掛かり、その威力は弱まっていくどころかどんどんと強大に、苛烈になっていく。

 魔導師達はその事態にどんどんと焦りの表情を浮かべていき、比例するように雷は強大になっていく。そしてとうとう限界が訪れた。最初は丸太程の太さだった雷は既に人の胴体程の太さに変貌しており、障壁の密度が低い者から次第にその身を雷に飲み込まれ始めていった。


「さあ!捻り潰すぞ!」


 その光景を見たクロウディアは狂気を声に乗せ、天まで轟けと言わんばかりに咆哮の如き号令を部隊に発する。目の前の稲光に飲み込まれていくハーベル皇国軍と、それを実行した男の激励の声。まるで麻薬の如き効果を見せるそれは兵達の心を狂気の渦へと引きずり込んでいく。

 レナやバーンはその光景に寒気すら覚える圧倒的なカリスマ性を垣間見て全身を震わせる。僅かな時間しか共に過ごしていないがこれほどの大器だったと痛感したが故に。


「バーンさん」


「ああ、遅れる訳にゃいかねえよなああああ!」


 覚悟を決めたかのように息を呑み、レナは矢を番えながらバーンに声をかける。バーンはレナの声を聞くと高揚を隠そうともせずにその顔に笑みを張り付かせると声を張り上げながら応えて愛剣を抜き張って突撃していく兵達の後を追っていく。その姿を見たレナも前衛の部隊を援護するために矢を放ち始めた。

 ウェイド王国軍の部隊が突撃していくのに呼応するようにハーベル皇国軍に襲い掛かっていた雷も次第に弱まっていき、その猛威の爪跡を戦場に露呈していく。目算に百以上の魔導師に二百近い歩兵や騎兵が薙ぎ払われるという悪夢の如き光景にハーベル皇国軍は息を呑む。簡潔に言うならば右翼の被害は部隊壊滅といっても過言ではない規模に到達しているのだから。

 そしてそれに追い討ちを掛けるように行われる追討戦。クロウディアの部隊だけでなく次峰軍と交代した先鋒軍も加わりあっという間に右翼の部隊が平らげられていく。もちろんハーベル皇国軍も指を加えてみていただけではない。左翼や中軍からの援護魔法に加え騎兵など足の速い部隊も右翼の救援に向かってはいるのだがあの光景を見た後である。尻込みして思った以上に戦線が押し上げられないのだ。

 それに加え肝心の馬も先程の雷により恐慌状態に陥っており宥めて進むだけでも途方も無い重労働とかしている。ぎりっと誰かの歯切りしが皇国軍に鳴り響き、それに応えるように王国軍の歓声が右翼を中心に轟き始めている。

 右翼からの圧力が無くなったために正面から敵を受け止めていた次峰軍も戦線をどんどんと押し上げ始め、敵の重歩兵の壁も順次殲滅されていく。轟々と音を立てて飛び交う魔法も重歩兵と混戦となっている次峰軍には効果が薄い。王国軍に到達する前に自軍の重歩兵に当たって届かないという事態が発生してきたからだ。

 開戦から凡そ小一時間程が経過し、既に太陽はその顔を半分以上大地に埋め始めている。王国軍と皇国軍の今後の展望を掛けて開始された戦いは一進一退の様相のまま夜を迎えようとしていた。

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