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ウェイド王国史 -時ー  作者: そこら辺にいる一般人えー
極光の主
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遭遇5

 クロウディアと神殺しが邂逅を成した頃、皇国軍内部でも動きがあった。

 発端は激しい魔力の爆発とその魔力の性質があまりにも荒々しく憎悪に満ち溢れた、まるで敵対している者の魔力のような気質である事が発端である。今も皇国軍の陣内は将兵達は殺気立ちながら色めき立ち、ぴりぴりとした緊張感を振りまいている。

 そんな中皇国軍を指揮する灼熱は一人不気味なまでの沈黙を保ち続けていた。但しその表情は冷静なものとは言い難く、難色を示すかのように眉間に皺が寄せられている。その様子に灼熱の周囲に居る騎士達はいつ指示が出るかと誰も口を開かずただ灼熱を黙って見ながら待ち続けていた。

 その視線に気付いていないのか灼熱はただ沈黙を頑なに守り、この騒動の原因と言える自らの契約相手である炎龍との念話に終始意識を向けていた。


-風龍と氷龍の気配が消失したのは間違いない。そしてその時に微かに感じられた力の残滓、正しく忌まわしき化け物神殺しの気配よ-


 告げられる炎龍の声には今にも全てを燃やし尽くさんと言わんばかりの憎悪が込められておりその激情の深さが窺い知れる。そしてそれに呼応するかのように炎龍の内包する魔力が爆発的に高まり周囲へと撒き散らされる。

 灼熱はそれを感じ取ると目を細め鋭い視線を遥か南方、地平線の先にいるであろう王国軍へと向ける。恐らくこの魔力の拡散は王国軍にも気取る事の出来るものが居るであろう。警戒を厳と成され急襲を仕掛けて殲滅するのも無理が生じてきた。

 そんな事を考えながら灼熱は炎龍の言葉に耳を傾け続ける。聞こえるのは彼の龍の凄まじいまでの憤怒の声と呪詛にも近い憎悪の叫びのみ。


-彼奴を燃やし尽くす為ならば我が存在全てを掛けて焦熱地獄へと叩き込んでくれようぞぉぉォォォ-


 どくん、どくんと鼓動を繰り返す心臓のように炎龍の魔力は鼓動を刻むが如く拡散し、敵意の含まれた魔力はどんどんと広がり続ける。灼熱は憎悪と憤怒に囚われた己の龍の声をただ沈黙を守り黙って聞き続けた。


「鶴翼の陣を形成している、か」


 神殺しとの邂逅から二時間程が経過した頃、クロウディアの元には偵察に分かれた騎兵達が続々と報告に戻って来ていた。彼らからの報告を聞いてクロウディアは満足そうに頷きながら騎士達が持ち帰ってきた情報を頭の中で整理し始める。

 まず敵の陣形は鶴翼の陣を築いているとの事。そしてその陣の前線部隊には魔導師と弓兵が多数配備されており接敵の際には遠距離から一方的に集中砲火を浴びる羽目になるのが容易く想像出来た。

 次に敵の荷駄の数が思っていた以上に少ない事。恐らく兵糧などは万遍に備蓄してあるだろうが王都の王城を攻める際の攻城兵器などの類が一切用意されていないという事であろう。恐らく龍騎士による急襲制圧を前提に軍を編成しているのが確認出来る。

 次にクロウディアが目を付けたのが騎兵達に出した指示にもあった輜重部隊の存在だ。どうやら話を聞く限り輜重部隊の元に全ての物資が管理されているようであり都度各部隊へと物資が移送されているのが騎士達によって確認されておりこれを叩き潰すだけで戦場に置いて敵の部隊への物資の輸送に多大な影響を与える事が出来ると確認が取れた。

 クロウディアは集められた情報に口元を緩めると馬の手綱を握り締める。その動作を見た騎兵達も同じように馬を操る為に手綱を握り締める。それを確認したクロウディアはただ短く一言だけ指示を出す。


「撤退」


 そして王国軍は皇国軍の陣の傍から撤退を開始する。先程から感じ取れる魔力の爆発ともいえる暴力的な奔流は恐らく敵の龍のものであろう。勘付かれたかと身構えもしていたが一向に襲撃を仕掛けてくる様子もないのでその退き足は軽やかなものであった。

 

「以上で報告を終わります」


 本隊と合流したクロウディアは先に撤退をしていたレナと共にラルフの元に偵察の成果を報告に訪れていた。

 既にレナから敵の一隊と戦端を開きこれを殲滅した事を報告されていたラルフはクロウディアから齎された話に口元を微かに緩める。クロウディアはそれを見ると騎兵達から報告を受けながら考察していた事をラルフに淡々と告げると判断を仰ぐようにラルフを見据え指示を待った。

 ラルフは暫し齎された情報を頭の中で吟味しつつ考えを纏めていく。そして方針が決まったのかクロウディアに声を掛けた。


「ならば敵の陣を食い破ってくれようぞ。我龍鱗の陣を敷き敵の腹を穿つ」


「ならば伝令を各隊に飛ばしておきましょう」


 それを聞いたクロウディアはレナを連れてラルフの天幕から退出すると直ぐに行動を開始する。近くに居た騎士に声をかけ全部隊への早馬を手配すると輜重部隊へと出向き物資の分配を即座に開始するように手配し、任せられている部隊へと戻ると残っていたバーンを呼び直ぐに行動の指針を報告する。

 

「明日にあるであろう皇国軍との戦、我々は当初の予定通り遊撃に徹しまず敵の補給を断つ事を第一として行動するぞ。

 また押されている戦線への援護も随時平行して行う故部隊を最大三つに分けて行動する事になることもあると考えていてくれ」


「お、おう」


 その話を聞いたバーンは一瞬呆けて居たが直ぐに取り繕うとクロウディアの言葉に頷きながら答え部隊の編成のために行動を開始する。

 それを見届けたクロウディアは満足そうに目を細め指示を待つレナに目を向ける。レナはクロウディアの視線に気付くとふわりと微笑み、戦場に赴くとは思えない笑顔を向けてきていた。


「レナ、君は各戦線への援護を担当してもらう事になる。

 部隊の半数程を見繕い指示をしておいてくれ。物資の優先度はそっちの方が高いだろうから分配もそちらの比率が大目で構わない」


「了解です」


 クロウディアの言葉を聞いたレナは最後ににこりと笑みを浮かべながら一礼し、ぱたぱたと走り去っていく。

 レナが動き出したのを見届けたクロウディアは一つ溜息を吐くと偵察の撤退の間際に感じ取った炎龍の魔力の荒々しさを思い返し身震いをする。とうとう明日、龍との激突が待っていると思うと高まる感情を抑えるのが難しくなってきたからだ。

 神殺しによって齎された魔法や技も頭の中に完全にすとんと入り込んでおり、まるで長年それを行使してきたかの如く扱える事も出来るであろう。血の記憶と師セフィリアと神殺しは言っていたがそれは間違いないのであろう。こうして神殺しによって齎された力を考えると納得出来てしまう。


「ふむ・・・・・・」


 煌々と照りつける太陽の下、とうとう王国軍と皇国軍の激突の時が訪れようとしていた。

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