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「…ってわけで、父さんの遺体はなくなっちゃったから葬儀も出来ない、お墓にも入れられない。最後くらいちゃんと見送ってあげなきゃとか思ってたのにさ。」

やれやれと肩を竦める和磨。とても近々に父親が亡くなったようには見えない。

「こうして破魔の里の君と知り合ったのも何かの縁だから。頼ってみるのもアリかなって。」

和磨の視線を受け、頭の中で内容を整理し、推測する。

「……火車、かな。」

「かしゃ?」

「うん。妖の一種。死体を持ち去るの。形も色々で、火の玉みたいなのが現れたり、雷鳴が鳴ったり、熱風が吹いたりって話もあるし、猫が化けるとか言われてる。」

「へぇ?俺のは何だったんだろ?あんまりはっきり見たわけじゃないんだよね。」

楓の挙げたどの姿にも和磨はあまりピンときていないようだった。姿だけでもわかれば探しやすいかもしれないと期待したが、そこからは切り込めないのを悟る。

「父さんだったらね。この妖!ってすぐわかるんだろうけど…マトモな情報無くてごめんね。思えば俺、妖なんてちゃんと見たこと無いや。」

「無いの?」

「無いよ。父さんとか君みたいに積極的に関わらなきゃ縁の無い世界だよ?」

からからと笑う和磨は誇張して語っているようにも思えない。本当に見たことがないのだと理解する。

「あ…この子、妖だよ。」

思い付いたように飛燕を呼び出す。短く鳴いて応え、飛燕が楓の肩に舞い降りた。

「え?その肩に乗ったやつ?」

「そう。」

目をゴシゴシと擦り、もう一度楓の肩に目を凝らしている。

「可愛いでしょ?巣から落ちて妖になりかけてたのを拾って…」

「巣?」

「うん、燕の巣。今は立派に燕だけど、昔は飛べなかったんだ。」

頷く楓に和磨は目を細め、ますます不可解そうな顔をした。

「……いや、待って。燕には見えないんだけど。」

「え?」

「何かこう…黒くて、ふわふわした塊みたいなのが浮いてる。」

楓は思わず飛燕を見下ろした。楓の指に止まる飛燕はいつも通りの燕だ。艶のある羽、小さなくちばし、つぶらな瞳。

「え、ちゃんと燕だよ?」

「いや絶対違うって。輪郭ぼやけてるし。」

「視力悪いの?」

「まさか。」

ぴぃ、と飛燕が不満そうに鳴く。

「あ…妖力が弱い妖は、はっきり見えない事もあるって聞いたかも…」

以前、里の老人・朱鷺から聞いた話だ。こんなにもはっきり見える飛燕がぼやけて見えるなんて、にわかに信じがたい。

「ふぅん……。」

和磨は興味深そうに飛燕を覗き込んだ。

「妖ってもっと、おどろおどろしいの想像してた。」

「飛燕は大人しい方だから。」

「あー、何か目は合った気がする。不思議〜。」

和磨はしばらく飛燕を見つめ、それからふと楓へ視線を戻した。

「……あ、そうだ。鍛冶場、見とく?」

「え?」

「父さんが居た場所。どうせ遺体探すならまず案内しといた方が早いでしょ。」

そう言って和磨は踵を返す。

「…ありがと。」

先を歩いていく和磨を追う楓。その肩から飛燕も飛び立ち、和磨の後を追った。

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