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涼水の気配の異変はわかった。だが、それが自分の身体の変調とどう関係するのかは、まるで腑に落ちない。

「此奴はお前が涼水と心を通わせたのではないのかと懸念したのだ。」

「心を通わせたって?」

「一時的に憑かれるのだよ。最初は知らない光景を懐かしがったり、昔の話を知っていたりする程度らしい。放置すればその内に身体を容れ物として取られてしまうと言われている。器を失ったとはいえ、神の力は強いのさ。」

そう説明し、流風自身が実物を見たことが無いから詳しくはわからない,と付け足した。

その道には詳しいと思っていた流風にもわからないことがあるのだと考えると少し意外だ。

「それだけ清い人間が居ないと言うことだ。安心しろ流風。この暴力娘に涼水は近付かん。」

白鴉がいちいち癇に障る言い方で締めくくる。

「万が一のこともあるからね。」

「…そこは弁護しなさいよ。」

ムッとする楓に笑いかけ、“それに”と流風が続ける。

「君の里はそういう変調に対して過敏だと思ったのだよ。」

その言葉に、前に朱鷺から聞いた“妖に魅入った者”の話を思い出した。流風の言う通り、穏便には済まされないだろう。

「…ありがと。心配、してくれて。」

もごもごと尻窄みになりながら礼を言う楓を見て、流風が声に出して笑った。

「…帰る。」

余計に恥ずかしくなって楓は勢いよく立ち上がった。

「おや、気分を害してしまったかな?」

「案ずるな、三歩歩けば忘れる。」

「鳥のあんたが言わないで!」

むきになって怒る楓に一人と一羽は顔を見合わせ、改めて笑った。

「帰る!じゃあね!」

「気を付けて。あと、君のご友人たちにもよろしく。」

去っていく楓の背に流風が投げかける。それを受け、ぴたりと足を止めた楓は振り返るとほんの一瞬舌を出し、すぐに踵を返して狐狸路へと入っていった。

「…餓鬼であるまいし。女子がはしたない真似を。」

「可愛いものじゃないか。彼女はああして感情を表に出した方が良い。」

「それもどうだかな。」

呆れた様子で白鴉が流風の近くに降り立った。


ーーー


「白鴉…楽しいのはわかるが、少しお喋りだな。彼女はたまに鋭い所を突いてくる。誘発して色んな情報が漏れてしまうよ。」

「すまん。だが楽しいわけではない。」

白鴉が少し不満げに楓の入っていった狐狸路に目をやる。あっという間に進んでいった後ろ姿はもう見えない。

「すまない、許し無く君のことを色々と話してしまった。」

先程まで白鴉の居た木の上へ、流風が話し掛ける。ハラハラと葉が落ち、トン、と軽やかな音を立てて人影が降りてきた。吽蓮だ。

「いい。隠してないし。」

ぶっきらぼうな言い方と表情の吽蓮だが、決して怒っているわけではない。

「折角だから、出て来れば良かったではないか。」

「やだ。」

「君だって彼女のことが嫌いではないのだろう?」

スッと差した吽蓮の腕には、前に楓が急拵え(きゅうごしらえ)の包帯代わりとして破いて使った彼女の着物が未だ巻かれている。

「その程度の傷…君ならもう治っているはずだ。手当てが嬉しかったかい?」

「……。」

言い当てられたのが悔しかったのか、プイとそっぽを向いてしまった。

「どいつもこいつも餓鬼だな。」

今度は吽蓮までが子供のような態度を取り再び呆れてみせる白鴉だが、流風はそれ以上は触れずに話題を変えた。

「それで、どうだった?」

「居なかった。」

「となると、残る可能性は二人か。」

簡潔な答えに頷き、流風はそのまま考えを巡らせるようにじっと地面を見つめた。

「どうする?里の近くで見張るか?」

白鴉がいつでも飛び立てる体勢で破魔の里が在るであろう方角を睨みつける。

「いや…しばらく様子を見よう。」

「ほう?」

意外だとでも言いたげな白鴉に流風は意味深な笑みを浮かべた。

すみません、これの前がひとつ抜けてましたm(_ _)m

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