表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/89

飛燕の気配に導かれて、鬱蒼と草木に覆われた山を駆ける。

まだ日が高くない、肌寒い山道を軽装で歩くのにもすっかり慣れてしまった。


数も多く、悪さをするとよく聞くこの山の妖は、ちょっかいこそかけてくるものの、悪意を持って襲い掛かってはこない。

むしろ好奇心を持って遠巻きに見ているだけの妖も少なくない。


朱音と桜、二人の「中立」である手前、楓は今まで桜のように頻繁に山へ入ったり、妖と関わったりはしなかった。

退治を目的として。

契約を目的として。


何かしら目的を持って接していた妖は、人間を敵として見ることが多かった。

こうして無意味に山へ入ってみると、思いの外、妖は大人しかった。

「この森の妖と仲良くなれる気がするの。」

姉の桜も、この状態を知った上でそう言ったのだろうか。

今ならそれも理解出来るかもしれない。


霧が出てきた。

(あの日と同じ…)

流風と会った時も、こうして濃い霧に包まれていた。

楓は自身の記憶と、そして飛燕の気配を辿り、足元を確かめながらゆっくり歩みを進める。


しばらく歩くと、人の声が聞こえてきた。

「いい加減にしろ!」

怒っているような、諌めるような声がする。

流風の声ではないが、楓は足を止めて耳を澄ませた。

「関わるなと言っているのだ。そいつも話してわからない愚か者ではない。そいつの主がこちらに着く前に…」

「君が蒔いた種だろう? 暫く黙っていてくれ。彼が話をしているではないか。」

(!)

聞き覚えのある声がして、楓は更に神経を研ぎ澄ませる。

声の主達は歩いているようで、段々と声が遠ざかっていく。

「あのお方も諦めておられる。奴等との無駄な関わりは避けねば…」

「いつ、あのお方が諦めたと言ったんだい? 僕は聞いていない。」

遠ざかっている上にあまり大きな声でもない為、話の内容は聞き取りづらい。

何の事だかはわからなかった。

唯一理解出来たのは、二人の話が平行線のまま、交わる様子がないということだけだ。

「良いか…__お前はもうすぐ…__今何か…」

「そんなことは…__」

会話の内容が気になるというよりは、遠ざかる気配を追い掛けたい気持ちの方が強く、楓は更に一歩を踏み出した。


霧の奥に、見覚えのある古木の影が見える。

「ここ…」

誰にともなく呟いた。

(あの人と会った場所…)

あれ以来、何度も行こうと試みて辿り着けなかった場所だった。

あの日は霧が晴れた時、その古木の下に流風が居たのだ。


再び霧が薄くなっていく。視界も随分と良くなってきた。

が、ふと気付くと、先ほどまでの話し声もしなくなっていた。

どこかへ行ってしまったのだろうか。

楓は不安になり、急ぎ足で古木の元へ近付く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ