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金沢調査

その日の夜、小谷と堀川は祇園の料亭「東山」を訪れていた。1週間前にも2人で来ていたのでおかみの堀川に対する態度も大きく変わっていた。

「堀川さん、お帰りなさい。小谷のお嬢さんとまたご一緒で、お似合いですね。」と常連の仲間入りが出来そうな感じだった。奥の小さな部屋に案内されるとすぐに付け出しが出てきた。飲み物は今日もシャンパンからスタートだ。

「今日はご苦労様でした。すばらしい講義でしたよ。それにしてもいつ聞いても先輩の声は低音が響き渡るし、高音は伸びやかだし、音階は正確で外さないし聞いていてほれぼれします。」と小谷清香が褒めちぎりと堀川康照は

「そんなことないよ、普通だよ。式務部ではみんなこんな感じさ。」と暗に自分が式務に配属されていることが当然と言っているようだった。

 前菜からお刺身、煮魚、肉料理と進み、お酒もシャンパンから白ワイン、赤ワインと進み、最後に冷酒が出てきていたころ、小谷が本題に入った。

「先輩、今日の講義の最後の講評で落音の下げ方できちんと半音落とすように言ってましたね。私、実はわざと4分の1音しか落とさなかったんです。60人の唱和でたった一人の音の外しを指摘できるなんて、さすが先輩の絶対音感は一流ですね。」と話を落音に向けた。

「やっぱり君だったのか。正確に4分の1音だけ外れていたから、きっと意図的なんだろうなと感じてはいたよ。少しずつ下がって行って4分の1に落ち着いたのなら単に音がとれていないということだけど、スタートからビシッと4分の1音下に入っていたからね。音楽経験者だと直感したよ。」と明確に答えてくれた。小谷はいたずらっぽく小悪魔のような微笑を浮かべて堀川を上目遣いで見つめて

「私のいたずらだったんですが見事な聞きわけでした。あの音の聞き分けが出来たのは会場にいた60人余りの中で私と先輩だけでしたね。周りの人は誰も気が付かなかった。先輩の指摘を何のことか理解できていなかったでしょうね。でもこの聞き分けが出来たのはもう一人いましたね。田島先輩です。そして堀川先輩と田島先輩はその音の外しを利用して2人だけの暗号に使ってましたね。私も西本願寺の晨朝勤行に参加した時にわずかな違和感を感じていたんです。そのたびに田島先輩がいそいそと定時に急いで帰って行くので、尾行したことがあったんです。ホテルまで尾行したんですがそこに現れたのは先輩、あなただったんです。こんなことがあったので、今回の事件も先輩を疑わないわけにはいかなくなってしまって、私どうしたらいいんでしょうか。」と途中から涙を流しながら話した。堀川は落ち着いて

「そんな手の込んだ暗号を使わなくても携帯電話で連絡なんかできるじゃないか。そんな面倒なことしないよ。それに僕にはアリバイがあるんだ。彼女が殺された時間、僕は本願寺の会議室で式務部の会議をしていたんだ。烏丸通のホテルには行けないよ。」と一蹴した。しかし小谷は涙声で

「これは警察の方の見方ですが、協力者がいれば犯行は成立すると言ってました。先輩、どんな手を使ったんですか。」と追及した。

「知らないよ。僕は無関係だ。君と結婚したいと思っているんだ。僕を信じてくれ。」と自らの潔白を訴えた。小谷はさらに

「警察は容疑者として堀川先輩と私の2人に絞っているようです。私もホテルのロビーで防犯カメラに写っていたので、確実なアリバイはあるけど、共犯者がいれば犯行は可能ということらしいんです。」と自らも容疑者として調べられていることを吐露した。

 

 食事を終えて外に出ようとすると堀川は小谷をエスコートしながら祇園のホテル街の方向に歩き始めて

「今日もホテルに行こうか。」と誘ってきた。小谷は自分が犯人ではないことを自分でよくわかっているので、堀川を疑う気持ちは大きかった。だからホテルで堀川と2人きりになると、今度は自分の命が狙われるかもしれないという恐怖に襲われて

「先輩、今日はやめましょう。田島先輩が死んだばかりだから、私はそんな気分にはなれません。」ときっぱりと断った。さらに心の中では、せっかく見つけた婿養子候補を失ってしまいそうで、残念な気持ちも大きかった。ただ堀川が犯人だったとしたら、彼に大きな精神的ダメージは与えられたようにも感じていた。


 得度習礼の最終日は晨朝勤行に続き、朝食をとって最後の研修センター掃除、さらに部屋の掃除と指導員のチェック、荷物の整理、身支度を整え西山別院の本堂に集合になった。僧侶養成部の部長の挨拶、西山研修センター長あいさつなどに続き、指導員からの別れの挨拶、研修生代表の感謝の言葉などが続き、中学校の卒業式のような形だった。

 式典が終了すると、研修初日に取り上げられていた携帯電話や電子機器の返却があった。杉下の携帯は電源を入れても残量はわずかだった。そこからは研修や生活を共にしてきた班の仲間たちとの、記念撮影や住所の交換などが続いたが、本堂の外には迎えに来た家族の姿が多く見受けられた。20代の大学卒業してまだ日が経たないような若者を迎えに来た夫婦は、おそらくどこかの県のお寺の御住職と坊守なのだろう。班のメンバーに頭を下げてお礼をしている。60代と思われる男性には同じような年代のご婦人が、得度を終えたご主人からスーツケースを受け取って車に積んでいる。

 杉下も同じ班のメンバーに簡単な挨拶を済ませ、布袍、輪袈裟の姿で家まで帰るつもりでいたが、彼を迎えに来ていたのは京都府警の林田だった。林田は

「杉下さん、今日は金沢にお帰りの予定ですか。」と聞くので杉下は嫌な予感はしたが

「はい。このあと本願寺前で土産を買って、昼過ぎには京都駅から帰るつもりでした。」と言うと申し訳なさそうに言うと林田刑事は

「実は田島栄心殺害の事件が暗礁に乗り上げています。容疑をかけていた堀川さんも小谷さんも確実なアリバイがあるんです。事件直前に田島さんとも小谷さんとも接触している杉下先生のご協力を頂きたいと思うんですが、いかがでしょうか。」というので少し迷惑な感じもした。しかし田島が『今日は話し合いに行ってきます。』と言って研修センターを出て行った時の表情が忘れられなかった杉下は、林田の申し出を聞いて、真相を確かめたい気持ちになった。

「わかりました。私で良かったらお手伝いさせてください。」と言って捜査協力することになった。早速京都府警捜査一課を訪れると、林田は杉下を会議室に案内した。部屋に入るなり早速本題に入った。

「わざわざ来ていただいて申し訳ありません。私たちのお願いは私と一緒に石川県に帰っていただき、堀川の実家の専学寺周辺の捜査にご協力を頂きたいんです。お寺社会のことに詳しく、教育界にいらっしゃったので、最近の若者の事情にもお詳しいとお聞きしています。石川県の方とお聞きして土地勘もおありかと思い、是非ともお願いしたい次第です。」と話した。京都府警は本格的に堀川を容疑者と確定したようだった。ただ協力者がどうしてもいないので、石川県に在住の杉下に同行をお願いしたみたいだった。


 すぐに京都府警を出ることにして、林田は部下に京都駅までパトカーを出させた。京都駅0番線から特急サンダーバードに乗車し、湖西線経由で金沢まで。約2時間の旅である。車中、林田は石川県のお寺事情を杉下からいろいろ聞いていた。

「石川県、特に金沢市周辺のお寺の事情についてお聞きしておきたいのですが。」と問いかけると杉下が

「石川県は加賀の一向一揆の地元で、浄土真宗の比率が高く、宗教熱が高いことが特徴です。堀川さんの専学寺もとても大きなお寺で、檀家の数は3000軒近くあるのではないでしょうか。当然それくらいあると下寺もあるだろうし、専学寺で勤める役僧さんたちも何人もいるでしょうね。そんな人たちの頂点に立っているのが住職である堀川さんのお父さんでしょう。しかし西本願寺の堀川さんはそのお寺の次男坊ということで、専学寺を継ぐ立場ではないわけです。昔なら部屋住みの僧侶となってしまうところです。だから彼は婿養子になって大きなお寺に入り、その後ろ盾で西本願寺での昇格を目指そうとしたんでしょうね。」そこまで説明すると林田刑事はおもむろに手帳を出して

「下寺とか役僧とか、堀川康照さんの言うことを聞きそうですかね。つまり従属関係はあるんでしょうか。」と詳しく聞いてきた。林田は

「そこまでの物は考えにくいですが、現地で実際に見てみるとつかめると思います。ただ、お寺の世界は中世の封建制がいまだに色濃く残っていますから、私たち一般人の常識とはかけ離れています。今でも住職のことは『おかみ』、息子さんたちのことは『わか』、娘さんのことは『ひめ』というように呼ぶ人もいます。お正月参りでは信徒がご挨拶に行くときは、ご住職の家族全員にお年玉を準備してお渡ししたりします。」と説明すると林田刑事は

「それは驚きですね。京都も封建的ですが、都会ですからそういう風習はかなりなくなりました。北陸のお寺社会はすごいですね。中世そのものですね。」というようなことを話しているうちにサンダーバード号は金沢に着いた。杉下は大きなスーツケースを持っていたのでとりあえず駅のコインロッカーに入れて、林田に同行することになった。

 2人は駅を出てタクシーを拾い、寺町にある専学寺に向かった。お寺に入る前に周辺の人たちに堀川康照さんの評判を聞いた。

寺町のはずれのお宅で庭掃除をしていた老婦人に林田が話しかけた。

「精が出ますね。京都府警から来た警察官なんですが、少しお話をお伺いしてもよろしいでしょうか。」と言うとその老婦人は振り返って林田を見て、怪訝な顔をしていたが

「何でしょうか。わざわざ京都の警察の方が。」と少し警戒した。林田は

「実はすぐそこの専学寺のご次男さんのことなんですが、西本願寺にお勤めの、ご存じですか。どんな感じの方でしょうか。」と老婦人の目線に高さを合わせて聞いた。するとよく知っている人のことだからか表情を緩め

「専学寺さんのご次男さんのことね。子供の頃からよく知ってますよ。大きなお寺のご次男で西本願寺でも活躍しているらしいわね。金沢のご実家のお寺が忙しい時には、急いで帰ってきて、ご住職の名代を勤めるらしいわ。小さいころから利発だったけどいい青年になったと聞いているわよ。この辺りの地元の人たちは、ご住職よりわかがお参りに来てくれたほうが喜ぶお宅も多いわね。」と答えてくれた。そこで協力者の杉下が

「御長男さんもいらっしゃるんでしょ。御長男の評判はどうなんですか。」と聞いてみた。教育の世界で兄弟が比べられて非行に走るケースは多い。ご婦人は

「御長男はお父さんと一緒に夫婦でお寺にいらっしゃるけど、まだあまり仕事に御熱心ではないという評判ですよ。子供の頃から弟の方が出来が良くて、兄は少しひねくれたって聞いてますけど。」と答えてくれた。杉下はその話を聞いて、ますます次男の康照さんが自分の方が優秀なのに次男ということで実家を継げない不幸を感じ、婿養子に行きたいと強く望むようになっただろうと推測した。それから同様に数人聞いてみたが同じような意見を聞かされた。

 次いで下寺を調査した。下寺はすぐ近くに正常寺と光閃寺があった。正常寺は千石さんという名字だと表札を見てわかった。チャイムを押すと中から声がして出てきたのは住職らしき60代の男性だった。

「千石さんですか。私は京都府警の林田と申します。こちらは協力者の杉下さんです。実はある事件でこちらに来ているのですが、千石さんはこちらのご住職ですか。」と聞くと

「はい、私が住職です。となりの専学寺の下寺をしています。」と答えてくれた。林田は

「ご家族は何人ですか。」と続けると

「この寺には私と家内の2人だけです。娘は嫁ぎ、息子は東京で働いています。」という答えだった。さらに林田が

「ご住職は最近京都へ出かけられたことはありますか。」と聞いてみると住職は

「私たちは下寺ですので京都に行く機会も少ないですね。ここ2年ほど行ったことがありません。」という答えだった。林田は嘘はなさそうだと判断したが、杉下はもう一つ聞いてみることにした。

「専学寺と下寺の正常寺はどんな関係になるんですか。例えば専学寺のご住職の頼みは決して断れないとか、ご家族の方のことでも隷属的に言うことを聞くとか言うことはありますか。」とかなり踏み込んで直接的に聞いてみた。すると正常寺ご住職は

「江戸時代のような身分制度があるわけではないので、隷属的ということはありません。言いたいことは言うし、間違っていたら指摘をします。専学寺が3000軒の檀家の法事に直接出向こうとしても、物理的に無理なところを、私たち下寺が補完しているわけです。持ちつ持たれつと言ったところですかね。」と教えてくれた。2人が連想していた隷属的な支配関係はなさそうだったので、次の下寺へ行くことにした。しかし次の光閃寺でもほぼ同じ答えで、成果はなかった。


 次に意を決して本丸の専学寺を訪ねた。金沢の中心に程近い寺町でお城のような塀で囲まれた敷地に、大きな本堂と隣接して住職家族の邸宅。そして見事なお庭が備わっている。本堂の横の事務所の建物の玄関から入ると、事務長と思われる男性が出て来てくれた。住職への面会を申し出るとすぐに取り次いでくれて、応接間に案内された。応接間のソファーは外国製なのか、かなり高価なもののようだった。待っている間にお茶が出され、お茶を飲もうとしたとき扉が開いて住職が入って来た。林田と杉下は緊張しながら立ち上がって

「京都府警捜査一課の林田です。こちらは捜査協力者の杉下さんです。お時間を頂きまして有難うございます。」と挨拶すると住職は

「専学寺住職の堀川天翔です。きょうはどんなご用件でしょうか。」と聞いてきた。林田は

「実は京都のホテルで、西本願寺の僧侶養成部の女性職員が殺害された事件で、いろいろお聞きしたいことがありまして、お邪魔しました。」と述べると住職はすぐに

「うちの康照が何か関係しているんでしょうか。」と心配顔で聞いてきた。すると

「いや、そうではありません。康照さんは完全にアリバイがありまして、康照さんの関係者も一様調べているんです。」と説明すると少し安心したかのようにほっとして

「それでは何をお調べになっているんですか。」と聞き返してきた。

「ご住職は6月10日の夜、どちらにいらしたか、わかりますか。」と不躾ながらはっきりと聞いた。すると住職は不機嫌そうな顔になり

「私を疑うんですか。少し待ってください。」と言って事務所へ出て行って総務を担当してくれている男性とメモ帳を確認して戻ってくると

「その日はこの寺で夕方金沢市泉町の高橋さんの年忌法要をしています。4時から6時までお参りとお話をさせていただきました。そこからは家族と一緒に食事しましたからアリバイと言えるかどうかはわかりませんが。」ということだったので林田は諦め、

「ではこのお寺の事務員さんと役僧さんたちを集めていただけませんか。」と頼んだ。するとすぐに廊下に出て全員集まるように指示を出してくれたので、集まるまでに3分もかからなかった。全員揃ったところで

「みなさん、6月10日の午後8時ごろ、何をしていたか証言できますか。」と聞いた。するとまず役僧の2人が

「僕たちはご住職と一緒に高橋さんの年忌法要に参加していました。」とアリバイを主張した。事務員も同様に証言し、台所を受け持つ女性従業員も同様の証言をした。そこで杉下の出番になり落ち着いた声で

「みなさんは従業員ですが、このお寺の御住職やご家族との間には従属関係は成立しますか、命令されたことは従いますか。」と問いかけた。すると

「従属というような関係ではありません。ご住職は雇い主ですが、戦前までのような封建的なものではありません。私たちも主張するところは主張しますし、嫌なことは嫌と言います。」と答えてくれた。さらに杉下は

「京都の西本願寺に努めていらっしゃるご次男の康照さんはどんな方ですか。」と直接的に聞いた。すると役僧の中の一人が

「彼は良い男ですよ。私たちに対しても礼儀正しいし言葉遣いも丁寧で、僧侶としての力量も優れていらっしゃる。御長男もいい人で、比べてはいけませんが、康照さんがこの寺を継いでほしいなと感じます。」とはっきりとした物言いをしてくれた。杉下はこの兄弟はあまりいい関係ではないかもしれないから、長男が協力者になる事はないなと感じた。


寺を出てバス停でバスを待ちながら林田が

「すこし見当違いだった気がしませんか。私たちは小谷さんから情報を聞きすぎて容疑者を堀川さんに絞ってしまっていたので、真実から遠ざかっていたかもしれません。」と提案した。杉下も

「そうですね。もっと他にいたのかもしれませんが、堀川さんだけでなく小谷さんの周辺も調べてみる必要がありそうですね。それによく考えてみれば彼女の方が、子供の頃から恵まれた環境で育ち、欲しいものは何でも手に入れてきたんでしょうね。わがままに育っていたのかもしれません。」と彼女の人物像に迫った。

 林田は杉下に

「杉下さん。金沢での捜査に協力いただいて有難うございます。ついでと言っては何ですがここまで来たら山口にもご同行いただけませんか。兄弟の問題に迫った先生の発想はやはり教育界にいらっしゃったからこその発想です。あと2,3日だけ付き合ってもらえませんか。」と頼み込んだ。林田は小谷清香の顔を思い出し、

「彼女には何か秘密がありそうな気がします。私はすでに退職しているので、時間だけはたくさんあります。喜んで同行させていただきますが、今晩だけは家に行かせてください。妻が待っていると思うので。どうですか。林田さんも今日はうちに泊まりませんか。」と言ってすぐに携帯電話で夕食を準備するように頼んだ。


 杉下の家は金沢市内のひがし茶屋街の近くの住宅街にあった。玄関を開けると妻はあまり機嫌がよさそうではなかった。せっかく待っていた夫以外に見ず知らずの警官を泊めなくてはいけなくなったのだ。顔では歓迎しているようなふりをしているが、長年一緒にいる杉下にはすぐにわかった。しかし明日からの山口遠征に備えて作戦会議もあった。

 風呂に入り用意されたビールを注ぎ合い、金沢の新鮮なお刺身に舌鼓を打った。そして妻の得意料理のエビフライと鶏のから揚げをむさぼるように食べた。林田は

「奥さん、突然来てすみません。それにしても奥さんはお料理がお上手ですね。このお刺身は京都では絶対に出てきません。すごくおいしい。」と褒めたつもりだったが

「それはスーパーで買って来たんです。スーパーの職人さんが上手なんですね。」と皮肉交じりに妻が言った。すかさず林田は

「エビフライと唐揚げもカリカリで抜群においしいです。」と追加で褒めたが

「お父さんはいつもエビフライと唐揚げを出すと『子供たちが喜ぶメニューだ。』って言うんです。子供たちはみんな結婚して出て行ってしまいましたが。」とつんつんしている。

 林田は杉下との作戦会議に話題を変えた。

「明日は山口ですが、小谷清香のどんなところを責めますか。」と聞くと杉下は

「清香さんは寺の跡取りに間違いないので、堀川康照さんよりも言うことを聞きそうな協力者は多いと思います。それにあの子は女王様みたいでしょ。裏がありそうな感じがします。男の子のいじめや暴力の問題は、解決への道は比較的簡単なんですが、女子の世界でのいじめや暴力は、首謀者がなかなか尻尾を出さないことが多くて、難しかったんです。彼女もそんな一面があるかもしれません。周りの人の話をじっくり聞いて、一つ一つ裏を取りながら進めていきましょう。」と杉下の経験をもとに話した。



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