変態Ⅱ 黒暗ちんちん 中
世界碩学会合は世界中を捜索して、ヤバい性癖の持ち主三人を探し当てた。
なんかこう、性癖を数値化してスキャンするようなアレを開発して、めっちゃ頑張って全人類をスキャンしたうえでの人選である。
世界碩学会合はピンク色の衣装に身を包み、△とか◯とか描いた黒いお面を被って、彼らを地下帝国に監禁してキンキンに冷やしたビールなどちらつかせた。
「えー、この星はすっかりダメになってしまいました!というわけで、みなさんにはちょっとAVを作ってもらいます!」
教師っぽい格好をして、黒板の前にたった水滴ジジイ(妊娠済み)がフガフガと明瞭ではない口調でがなり立てる。
黒板にはBL法(ボーイズ・ラブ法)と書き殴られていた。
ふざけんな、やめろバカ、イカゲームなのかカイジなのかバトロワなのかどれなんだ、という思い思いの罵倒が三人から飛ぶ。
「黙れコノヤロー!ファッキンジャップくらい分かるよバカヤロー!
……いいですか!そのAVは、一般人的感性で視聴すると、発狂するようなモノを作ってくださいね!
中途半端なものは許しません!我々が映倫の代わりをやるので、完成したら呼んでください!我々のうち、半数以上が、嘔吐・失神・発狂・失明・ショック死いずれかの状態に至ったら合格です!」
「なんでそんなことしなきゃいけないんですか?」
「地球のためだよバカヤロー!」
支離滅裂である。
「まあ、特典もありますんで。まず、皆さんには莫大な予算が与えられます。一人50兆円!これは好きに使って構いません。何やってもいいです。文句言うやつは射殺していいです。許します。ほら、やる気出てきただろ?」
三人の顔つきが変わった。世の中、金と暴力である。かつてはセックスもそこに入っていたが、今はババアが出るので。
「では、面癖者のみなさん。よろしくお願いしますね」
歴史を変えるレベルのド変態共が、動き出した。
* * *
面癖者の一人目は言う。
「AV?バカバカしい。真正面から変態星人をねじ伏せてやる」
彼は生物学者であった。それも一流の。
「人類が想像しうる、最も恐ろしい生物兵器を作り出し、変態星人を皆殺しにする!……私は、ドラゴンを作る!!」
* * *
面癖者の二人目は言う。
「AV?バカバカしい。変態星人に友愛のメッセージを届けて融和の道を探る!」
彼はエンターテイナーであった。それも一流の。
「人類が想像しうる、最も巨大な娯楽施設を建設し、変態星人を驚嘆させる!……私は、巨大アミューズメント・パークを作る!!」
* * *
面癖者の三人目は言う。
「AV?バカバカしい。こんな変態どもと一緒に居られるか!俺は自分の部屋に戻るぞ!」
彼は凡人であった。それも一流の。
「なんで呼ばれたの?俺」
それは誰にもわからない。
これも計画の一部だ、とかなんとか。
* * *
変態星人はそんな彼らをデカいモニターのようなこう、空間に投影するようなアレで見て、指を指して笑っていた。
「地球ップは愚かだな!なにが面癖者だ!」
「まあでも、何もしないのも我々の方針に反するな」
「相手するのもバカバカしいが、ここは奴らの鼻っ柱をへし折ってやるか」
彼らは地球人全員をスキャンして、世界碩学会合の捜索から漏れた変態性癖者を二人ピックアップした。
選ばれし裏変態二人、彼らが自宅でおせんべいを齧りながらスマホでユーチューブを見ていると、急に映像が切り替わった。
なんかこう、いかにも洗脳されそうな、うにょ~んとした映像に。
【オラ!催眠!催眠解除!催眠!】
「ヒーーーーッ!!」
なんかこう、洗脳電波みたいなもので、彼らは変態星人の尖兵に仕立て上げられた。
一回催眠解除する必要があったのかは、誰にもわからない。変態星人にすら。
「ククク……お前たちは破癖人だ。さあ、我々のため働いてもらおうか」
「ハイグレッ!ハイグレッ!ハイグレッ!」
彼らは面癖者二人を追った。面癖者のうち、凡人一名は放置された。どうでもよかったので。
* * *
面癖者のひとり、ドラゴン創るマンは、なんやかんやあって完成したドラゴンをほれぼれ見つめていた。
「美しい……鋭い爪牙、逞しい四肢、滑らかな鱗、天を覆う翼。これぞまさに、ドラゴン!!」
ドラゴンは天を仰いでオギャーーーーッと咆哮を上げた。その全長は戦車をも凌ぐ。ゴオーッと天へ噴いた炎のブレスの余波で、数百メートル離れて見守るドラゴン創るマンの前髪がチリチリと焦げた。
「これなら、イケる……ついに、私の念願が叶う!」
彼は左肩にカメラを担ぐと、右手でスマホを操作し、部下に電話をかけた。
「おい!至急、例のものをここに――うん?」
カメラを載せていないほう、右肩が不意に叩かれる。おかしい、ここには私とドラゴンの他に、誰もいないはず――
ニヤニヤした、脂ぎったデブが、いつの間にか背後に立っていた。
「フウ、フウ、私ね、あなたの、破癖人……フヒヒ」
ドラゴン創るマンは、スマホを落とした。
「ドラゴン創るマンさんねぇ、あなた……フゥフゥ……私も最初は、騙されましたよ。あなたが……フゥフゥ……大真面目に、ドラゴンで変態星人様方を焼き殺す計画を立てているのかと……ハァハァ。
でも、気づいたんですよ……あなたが、ドラゴン開発の裏で、最高級車、ランボルギーニ・アヴェンタドールをこっそり購入していることにね……ハァハァ」
「あなたは、大真面目に面癖者の任務を完遂しようとしていた。つまり、あなたの目的は、ドラゴンカーセックスのAVを撮影することです!!」
* * *
「うんうん、これほど巨大なテーマパークは世界中のどこを探してもないだろう」
面癖者、陽キャマンは満足していた。
そのテーマパークは、「水流」をコンセプトにしている。上空から見れば、直径10キロを超える巨大な円を描くそれは、中心部には巨大な山状のモニュメントが設えられ、そこから段状に、上層から下層へと水が流れ落ち、いきわたるようになっている。
様々な趣向を巡らせたアトラクションがそこかしこに敷設され、その美しさもさることながら、来園者は地球上で最も楽しい一日を過ごすことになるだろう。
開園日の今日は、世界中で垂れ流したCMの効果も相まって、ほとんど逃げ場もないくらい満員の人だかりだ。
「これなら、イケる……ついに、私の念願が叶う!」
彼は左肩にカメラを担ぐと、右手でスマホを操作し、部下に電話をかけた。
「やあ、至急、例の仕組みを動作させ――うん?」
カメラを載せていないほう、右肩が不意に叩かれる。おかしい、この監視施設には私の他に、誰もいないはず――
ニヤニヤして、ビキニを着た金髪褐色ギャルが、いつの間にか背後に立っていた。
「いえーい!あーしね、あなたの、破癖人……にひひっ」
陽キャマンは、スマホを落とした。
「あーしもさあ、マジで騙される手前だったんだけど。おっちゃん、マージで巨大テーマパーク作るじゃん!ウケる!って。
でもさあ、裏であんなことしてたら、バ・レ・バ・レ。……おっちゃん、この施設をバイオマス発電で完全に独立した一個の楽園、とかゆーて、地下に大量にうんこおしっこ溜め込んでるでしょ?」
「おっちゃんの目的はァ――この施設にみっちり詰まった来園者に、逃げ場のない状況で、大量のうんこおしっこをあの頂上の山から流し込んで阿鼻叫喚のスカAVを撮影すること!!どう?当たりでしょ。ニヒヒッ」
* * *
「あなたがたのAV……並の発想です。平凡。フヒヒ。所詮凡人の考えること。なろう小説家あたりがヒーヒーいいながら絞り出した平凡なそれのようなもんです」
「発想が貧困!ウケるwドラゴンカーセックスも巨大スカ施設も、小学生でも思いつくっしょwあーあ、もっと骨のあるヤツいないかなっ!」
膝から崩れ落ちる、面癖者二人。
自分の生み出した創作上の人物にまで発想の貧困さを指摘され、膝から崩れ落ちる筆者。
人類の明日はどっちだ。
劇場版バトロワうろ覚えなんだけど、銃撃戦でガニ股みたいなポーズででぴょいーんってジャンプするちょっと間抜けなんだけどなんとなく鬼気迫る感じのあの動き好き




