chapter5 純度の違いの理由
〖それでな、ヴァリアス。
迷宮の魔物が魔石ではなく、純度の低い魔昌石を持つ理由だが……〗
ようやく、私の問いに答えが返ってきた。
〖迷宮の魔物は、外の世界より濃い魔素の中で生きておる〗
「それなら……むしろ純度は高くなるはずでは?」
思わず首を傾げた。
〖ふむ。だが迷宮は、人間に狩られやすい環境にある。
つまり、迷宮に生きる魔物は“生と死の巡り”が早いのだ〗
――なるほど。
私はその瞬間、気付いた。
生まれ、死に、また生まれる――その短い循環こそが、純度を落とす理由なのだ。
〖そうだ。迷宮の魔物は短い周期で命を終える。
だから核は結晶しきれず、魔昌石に留まるのだと伝えられておる。
深層で狩られず長く生き延びた魔物ならば、魔石に匹敵する核を宿すこともあるだろうが……そんな迷宮は滅多にない〗
父上は、わずかに間を置いて続けた。
〖例外がひとつだけある――“ティスディン迷宮”だ〗
「ティスディン迷宮……?」
思わず口に出してしまった。
〖ああ。この山の北方に広がる迷宮だ。今はティラン王国が管理している。
……もっとも、迷宮を制覇したなど、この四千年は聞いたことがない〗
父上は、どこか懐かしむように笑った。
「じゃあ……四千年前には、誰かが?」
〖ああ。異世界から召喚された人間が、確かに踏破したと伝わっておる。
当時は大騒ぎだったものだ。わしも、一度迷宮に足を運び、会いに行ったことがある〗
「父上が……?」
驚いて父上を見上げたが、それ以上は語ろうとはしなかった。
へえ……そんなことがあったなんて。
でも――なぜだろう。初めて聞いたはずなのに、胸の奥で何かがざわめいていた。
まるで、以前から知っていたかのように。
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