chapter30 迷宮なんだろうな
side:ヴァリアス
子竜たちと共にブルートボアを倒した。
すると――肉、魔石、キバ、剛毛の束がドロップする。
子竜たちは巨大な肉塊にかぶりついている。
私もそれに口をつけた。
「うまぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
思わず絶叫する。
脂はややくどく、獣臭さもある。
だが、それすら凌駕するほどの濃厚な旨味。
今まで食べたものの中で、間違いなく一番美味い。
数百年前に討伐した個体がアイテムボックスに入っているが、あちらは時間が止まっている。
有機物が腐ることはない。
――取っておいて正解だったな。
そう思いつつ、ふと考える。
生でこれだけ美味いのだ。
焼いたら……どうなる?
というわけで、肉を一口大に風魔法で切り分ける。
「《ファイアボール》」
火球を生み出し、肉を炙る。
じゅう、と音を立て、香ばしい匂いが立ち上った。
「こりゃ、たまらんな」
焼けるのを待つ。
……妙だ。魔物が追加で現れないな。
まぁいいか。
現在、右手だけ人化を解き、ドラゴンの腕に戻している。
とはいえサイズは幼女のままだ。
片手は竜の腕、片手は人の手。
我ながら器用だと思う。
竜の爪に肉を刺し、人の手で火球を操る。
初めての試みだが、悪くないな。
焼けるのを楽しみにしていると、子竜たちが匂いに釣られて集まってきた。
肉塊はまだ大量に残っている。
(ははーん、匂いに釣られてきたな?)
かじっていた肉塊の近くへ火球を撃ち込む。
直撃はさせない。熱波で表面だけを焼く。
「ほら、お肉焼けたよ」
子竜たちは再びかぶりついた。
私も焼けた肉を口へ運ぶ。
「……うまぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
生とは違う。
脂のくどさが和らぎ、香ばしさが旨味を引き立てる。
これは反則だ。
ちなみに肉塊以外のドロップ品はすでに収納済みだ。
腹が満ちると、自然と思考が冴えてくる。
子竜たちは満足げに地面へ転がり、仰向けになっている。
さて――ここがどこなのか、いい加減分析するか。
予想はついている。
“迷宮”だろうな。
聞いていた迷宮とは少し違うが。
遭遇したのはゴブリン、ホーンラビット、ブルートボア。
だが、倒した後に再出現する様子はない。
それに――死体がドロップアイテムへと変わった。
本来、そんな現象はありえない。
食べ残した肉塊をアイテムボックスに収納し、代わりに卵を取り出す。
私たちドラゴンの卵だ。
瘴気の中に放置すれば、アンデッド系統のドラゴンが生まれる可能性があると言われ、回収しておいたものだ。
父上の話では、迷宮は“生物”を取り込めないらしい。
だが――試してみる価値はある。
卵を地面に置く。
すると、みるみる石床に沈んでいった。
次にブラックドラゴンの卵を取り出し、同じように置く。
こちらも、静かに沈む。
……なるほどな。
ここのダンジョンマスターが何を考えているのかは分からない。
けど、追撃しなかった理由が浮かばない。
食事中の我々は、完全に無防備だったはずだ。
この卵は――そのお礼だと思ってくれ。
「みんなー、そろそろ行くよ」
声をかけると、子竜たちは起き上がり、こちらへ駆け寄る。
「きゅい?」
もう行くのか、と言いたげだ。
「そうだよ。いつまでもここにいるわけにはいかないからね」
そう言って、子竜たちを連れ迷宮を後にした。
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