chapter28 迷い込んだ先
※複数視点です
side:ヴァリアス
襲ってくるゴブリンたちは、倒しても倒しても現れては襲いかかってくる。
やはり、おかしい。
耳と魔石はきちんとドロップする。
だが──この状況はどう考えても異常だ。
そんなことを考えていると、子竜たちが目を覚まし、ふわふわと飛び回り始めた。
「きゅいー?」
「きゅ?」
「きゅきゅ?」
子竜たちは、「ここ、どこ?」とでも言いたげに鳴いている。
起きてきたなら、ちょうどいい。
人型に変わろう。
ドラゴンの姿のままでも問題はないが、洞窟内では少し窮屈だ。
私の身体が光に包まれ、次第に小さくなっていく。
そして──茶髪のロングヘアを持つ、幼い少女の姿へと変化した。
「「「きゅ!?」」」
子竜たちは、揃って驚いた様子だ。
私は軽く微笑み、手招きしながらそれぞれの頭を撫でてやる。
だが、その間にも事態は進行していた。
私が倒したゴブリンのドロップアイテム──耳と魔石が、地面へと沈み始めたのだ。
その光景を見た瞬間、私は“ある可能性”に気づく。
──あれ?
もしかして、ここは……。
私は、この洞窟が何であるのかを理解した。
■ ■ ■
side:???
「マスター、大変です!!
侵入者が現れました!!」
副官を務める者が、慌てた様子でぼくの実験部屋へ駆け込んできた。
……今、ちょうど良いところだったのに。
「……で?」
ぼくは淡々と返す。
現在、迷宮を強化するため、内部の魔物同士を意図的に争わせている最中だ。
最近は冒険者も来なくなり、正直──暇だった。
だからこそ、こうして素材をドロップさせ、迷宮に吸収させている。
そのおかげで、階層の生成速度は飛躍的に向上した。
ついでに魔法実験もできるし、腕も鈍らない。
ダンジョンマスター権限で支配してはいるが、“何でも言うことを聞く”だけの存在では、正直つまらない。
仲間──もっとも、アンデッドだが──にも研鑽するよう言ってある。
いつ、何が起こるかわからないからね。
「侵入者は……ドラゴンです!!」
「──竜だって?」
その言葉を聞いた瞬間、胸が高鳴った。
ドラゴンに遭遇するのは、これが二度目だ。
最初の一体は、人の姿に変わることができる規格外の存在だった。
あの金髪のイケメン──最深部まで辿り着いたかと思えば、ぼくの顔を見て、にやりと笑い、何もせずに去っていった。
……あれは一体、何がしたかったのだろう。
この迷宮に囚われて、どれほどの時が経ったのかはわからない。
外の世界の様子も知らない。
最初は絶望したが、死ぬことすらできなかった。
だから開き直った。
ならば──最高の迷宮を作ろう、と。
冒険者は魔物を倒し、素材を拾い、成長して帰っていく。
それこそが迷宮の在り方だ。
迷宮に眠る宝目当ての──欲にまみれた者も来たが、
大半は魔物に殺されるか、逃げ帰るだけだった。
そして、いつしか──誰も来なくなった。
久方ぶりの客人。
しかも、ドラゴンだ。
「……面白くなってきた」
ほくはそう呟き、侵入者がいる領域を映し出した。
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