chapter23 洞窟の奥から
謎の足音が聞こえ、私は即座に警戒態勢に入る。
音は――次第に近づき、やがて一体の巨大なドラゴンが姿を現した。
黒い鱗は鈍く光っているが、身体中は傷だらけで、見るからに満身創痍だ。
その姿は――まるで、先ほどまで私の腕の中にいた子竜が、そのまま成長したかのようにも見えた。
私に抱かれていた子竜たちは、私の腕からするりと抜け出すと、現れた巨竜のもとへ駆け寄り、甘えるような仕草を見せる。
「エヴァンズドラゴンが、こんな場所にいるとは珍しい。
“神の御使い”とされるドラゴンであっても、この事態は看破できなかったか……」
巨大なドラゴンは、威厳ある声でそう言った。
エヴァンズドラゴン?
神の御使い?
初めて聞く言葉ばかりだ。
私がそんなことを考えていると――顔に出ていたのか、巨竜は続けて口を開く。
「ふむ……心当たりはなしか。
まぁ、その若さだ。親から何も聞かされておらぬのだろうな。
生まれてから二百年余、といったところか」
年齢なんて、見ただけでわかるものなのか?
血まみれではあるが、相当な年月を生きている存在なのだろう。
「それよりも――死竜がいただろう?
あれは、どうした」
「倒しましたけど」
私がそう答えると、なぜか巨竜は笑い出した。
「フハハハハ! 面白いことを言う小童だ。
我ですら敵わぬ存在を、貴様が倒したというのか。
――名はあるか?」
「ヴァリアス」
少し苛立っていたので、名前だけ返す。
すると巨竜は目を見開き、すぐに納得したような表情を浮かべた。
「なるほど、名持ちか。
それならば、あの死竜を討てたのも道理だ。
だが……アンデッドはしぶとい。
よくも、これほど短時間で倒したものだな」
感心した様子で、そう問いかけてくる。
「魔法で倒しましたから」
私は短く答えた。
「……どんな魔法だ?」
「光」
「バカな!?」
巨竜の表情が、はっきりと驚きに染まった。
聞かれたから答えただけなのだが、そんなにおかしいことだろうか。
しばらく私を凝視した後、巨竜は再び納得したように頷く。
「なるほど……“転生者”か。
人間から竜へと転生するとは、実に珍しい。
いや――それこそが、この世界の“異常事態”なのかもしれぬな……」
一人で納得されても困る。
「どういう意味です?」
私は素直に問い返した。
「ドラゴンとて万能ではない。
光魔法を扱える竜も存在はするが、それは“変異種”――極めて例外的な個体のみだ。
通常、竜が扱える魔法は火・水・風が基本。
地竜は土魔法を使うが、奴らは生存競争に敗れ、翼を捨て、脚力に特化した進化を選んだ存在だ。
我から見れば、敗北者に等しい」
……辛辣だな。
歴史の話としては興味深いが、言い方が容赦ない。
「……では、あなたは?」
「我はブラックドラゴン。
この世界に存在する竜族の中でも、上位に君臨する種族だ」
堂々とした口調で言い切る巨竜。
……格好はついているが、
血まみれでボロボロの身体でそれを言われても、
正直、威厳はあまり感じられなかった。
読んでくれた方ありがとうございます
誤字、脱字などの不自然な文章があれば、指摘お願いします
他の作品も読んでくれたら、嬉しいです
面白いと感じたら、評価やブックマークお願いします




