chapter20 いざ、羽ばたかん
群れのみんながいなくなった理由は、もう分かっている。
それに、いつまでもこんな場所に留まっているわけにもいかない。
アイテムボックスには食料があるが、できるだけ使いたくはない。
あれは本来、緊急用だ。
群れのみんなに分けようと父上に相談したこともあったが――
そのとき、父上は静かに首を振った。
『その獲物はお前が狩ったものだ。誇りを持って自分で食いなさい』
竜にとっての誇り。
それは――どんな小さな獲物でも"自分の力で得る"ことなのだ。
だから、私も竜として恥じぬように生きなければならない。
……さて。
これから向かうのは、“瘴気の空”。
あの場所は危険だ。
瘴気に触れただけで、命を落とすこともあると聞いた。
だからこそ、準備は怠らない。
「《ホーリークローク》」
そう詠唱すると、私の身体を淡い光が包み込む。
聖属性の魔力によって、瘴気を払い浄化する防護魔法だ。
これで――少しは安心できる。
羽を広げ、夜の空へと舞い上がる。
目的地は、“瘴気の空”。
そしてその向こうにある、迷宮。
■ ■ ■
……改めて見ると、ひどい有様だ。
空は黒く淀み、大地は裂け、至るところから瘴気が吹き出している。
時折、竜巻のように瘴気が渦を巻き、空間そのものをねじ曲げていた。
地上を見下ろせば、そこにいるのは生者ではない。
ゾンビ、スケルトン――アンデッドばかりだ。
まるで死が世界を支配しているかのよう。
私は瘴気の渦を避けながら、迷宮を探し続けた。
アイテムボックスの食料は心強いが、消費は早い。
できるだけ温存しておきたい。
この先、どんな危険が待ち受けているか分からないのだから。
魔力で視力を強化し、暗黒の中を飛び続けること数時間――
岩肌の奥に、ぽっかりと開いた洞窟の影を見つけた。
「……あれは、もしかして――」
私は翼をたたみ、洞窟の前へと降り立った。
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