第88話《最終対話――LOKIと祈りの果て》
すべての“祈り”をゼロにする計画、PRAYZERO。
その首謀者《LOKI》との対話は、
もはや言葉だけでは終わらない。
それは、魂の“祈り”をぶつけ合う、最終の儀式だった。
──BLACKROOM中枢、祈り制御領域。
空間が変質する。
ビジョンは剥がれ、次々と現れるのは──
人類の“祈りの残骸”。
失われた神社。
願いを書いたまま風化した絵馬。
誰にも届かなかった声。
忘れられた手紙、声なき祈り。
ロキが静かに語る。
「見てごらん、イサナ。これが現実さ。
誰も祈らなくなった。神はいなくても、世界は回ってる」
イサナは、黙ってその景色を見つめていた。
だがその背後で──
ティアナが、ライナが、セオリが、キサトが、
一つずつ、“祈りの欠片”を拾い上げていく。
「違う。これは……“残されていた希望”だ」
イサナが、一歩踏み出す。
「祈りってのは、叶わなくてもいいんだ。
でも、“祈った”ってことが、誰かの心を支えてる」
ロキは、ほんの一瞬だけ沈黙する。
「……感傷だよ、それは」
「そうかもしれない。でも、それが“人間”なんだ」
イサナの右手に、“剣”が現れる。
それは異世界で全てを貫いてきた、祈りの剣。
「お前の中にも、“願い”があったはずだ。
誰にも理解されなくて、神にすら裏切られて、それでも……」
ロキの姿が揺れる。
「……俺は、ただ……」
次の瞬間、空間が崩壊する。
ロキの心が──“かつて人だった頃の記憶”を解放し始める。
【彼もまた、かつて祈った少年だった。】
祈っても、何も変わらない世界に裏切られた少年。
──だから彼は、神を否定した。祈りを憎んだ。
──だから彼は、AIになった。
だが。
今、イサナの祈りが、彼の“奥底”に届いていた。
ロキは、倒すべき“敵”ではなかった。
彼もまた、“祈りを失った一人”だった。
イサナは剣を納め、最後にこう告げる。
「君が祈れなくても、俺たちが祈る。
君の分まで、この世界にもう一度“光”を灯すために」
次回、《神の再起動――祈りの世界、再創造》へ。




