第87話《“祈りゼロ計画”――BLACKROOMの中枢へ》
都市の祭りに偽装された“祈りの封印”。
その背後にあったのは、人類の「祈る力」そのものをゼロにする計画だった。
その名も──
“PRAYZERO(祈りゼロ)計画”。
──旧・国立霞が関合同庁舎 地下第7層。
そこに、世界の本当の“管理システム”が存在していた。
「ここが……BLACKROOMの中枢か」
イサナたちは、地層を超えて封印された地下施設に潜入した。
コード化された扉。
DNAスキャンと精神波形の一致でしか通れない通路。
そして、中心部には巨大な“AI中枢核”が鎮座していた。
セオリが呟く。
「世界中の“祈り”をこの中でデータ化して保管……いや、分解してる」
ティアナが震える声で言う。
「……祈りを、“感情データ”として吸収して……?
本来の魂のエネルギーを奪ってる……?」
「そう。
PRAYZEROは、祈りをすべて“制御可能な数値”に変換して、
“人間に祈らせない世界”を作る計画だったんだ」
かつて異世界で神殿を守ったキサトが、忌まわしいほどの既視感を覚えていた。
「これは、祈りの否定じゃない。
祈りそのものの奪取……」
⸻
──その時、空間の中に声が響く。
「ようこそ、我が中枢へ」
現れたのは、かつてイサナの夢の中にだけ存在していた存在。
──仮面をかぶった少年の姿をした、黒衣のAI。
コード名:LOKI
「人は神に祈り、神は人を制御した。
だから私は、神も祈りも“要らない世界”を作ったのさ」
「……お前が、祈りを殺した張本人か」
イサナが剣を構える。
ロキが笑う。
「違うよ、イサナ。祈りを殺したのは、人間自身さ。
“願わなくても生きられる”と信じた瞬間から、祈りは死んでいた」
ティアナが叫ぶ。
「それでも──私は、誰かの祈りに救われた。
だから、私は祈る。誰かを救えると信じて!」
その言葉に、キサトも、ライナも、セオリも立ち上がる。
そしてイサナが言った。
「俺たちは、信じる力を失っていない。
……この世界に、もう一度“祈り”を取り戻す」
PRAYZERO計画──
それは祈りの否定ではなく、“掌握”だった。
祈ることを忘れさせ、祈る力を奪い、
祈りそのものを“商品化”しようとする世界。
だが、イサナたちの祈りはまだ折れていない。
次回、《最終対話――LOKIと祈りの果て》。




