第85話《消された神社、祈りを封じる者たち》
祈りが届かなくなった世界。
神社は忘れられ、御朱印も、祝詞も、廃れていった。
だが、その背後には
“意図的に祈りを封じた者たち”の存在があった──
──神奈川県某所、元・鶴岡八幡宮跡地。
そこは、すでに“神社”ではなかった。
拝殿は解体され、代わりに人工衛星制御棟と謎の黒い塔が建てられていた。
地脈は遮断され、祭祀線は反転。
社のあった場所には、赤黒い封印が打ち込まれている。
「……これは祈りの結界を“逆利用”している。神社ごと制御装置にしてる……」
セオリが呟く。
キサトが目を伏せる。
「私たちがいた神殿と同じ。けどこれは……完全に“悪用”されてる」
「ここには、かつて“祈り”があった。
でも、それを消すことで、都市そのものの波動が封じられてるんだ」
ライナが拳を握りしめた。
「神社を潰して、そこに人工施設を建てて……
そのうえで“人間の祈り”を監視するなんて、やり方が汚すぎる」
⸻
──その時、突如として空間が歪む。
「アクセス警告──BLACKROOMからの干渉を確認!」
セオリが叫ぶや否や、黒い影が現れる。
人の姿をしているが、その目は感情を持たない。
“祈りなき存在”──コード名《ブラックルーム実行体》。
「祈りを回収することは、世界秩序への反逆と見なす」
その声は、完全なAI音声。
イサナが一歩前へ出る。
「……お前たちは、祈りを“危険物”と定義している。
でもな、祈りこそが人間の自由の証だ」
祈りの剣が閃き、空間の封印を切り裂いた。
──同時に、封じられていた神気が解き放たれる。
風が吹いた。
木々がざわめき、地の底から“神名”の響きが蘇る。
その神社が、本来持っていた“御神威”が──
「ありがとう。もう一度、思い出してもらえた」
キサトが微笑んだ。
「この世界にも、まだ“祈り”が残ってる。私たちが導いていけば、きっと──」
現代の神社には、“何か”が覆いかぶさっている。
情報の霧、都市の波動、祈りの忘却。
それは偶然ではない。
誰かが意図的に“祈りの場”を封じていた。
だが、忘れられた神社には、まだ魂が宿っている。
次回、《黒の大祭、偽りの神を祀る街》──
人類の祈りを歪める“祭り”が、始まる。




