第72話《時の檻、祈りの剣(キサト覚醒)》 ※「アルズマの毒」→「祈りを守る“時”」への流れ/キサト=ヒユの覚醒を描きます。
毒が世界に入り込むとき、
それを止めるのは、力ではない。
信じるという祈り。
そして、それを“未来に託す勇気”。
封印されし“時の神殿”が、静かに軋み始めていた──
──静寂の中に、響く残響。
それは、遥か彼方にある「時の神殿」。
イサナの祈りと共鳴したことで、眠りの結界が揺らぎ始めていた。
古びた大扉の前で、ただ一人、
時を守ってきた少女──ヒユは、そっと目を開いた。
「……やっと、来たね」
まどろみの中、彼女は“過去”と“未来”の境界を見つめていた。
──イサナの手に、私はもう剣として在る。
それでも、まだ“私”は終わっていない。
まだ、伝えていないことがある。
託さなければならない祈りが、ある。
足元に流れる時の砂が、霧のように巻き上がる。
すると、彼女の前に現れたのは、祈りの残響──
かつて時の神殿で祈りを交わした、仲間たちの“想いの記憶”。
ミハヤの、炎のような願い。
アマネの、柔らかな包容。
ツユカの、導きの風。
ティアナの、水の再生。
「……全部、見えてる。だから怖くないよ」
ヒユは、祈りの深奥──すなわち“名を持つ剣”へと向かって歩き出す。
その名は──キサト。
「時継」という名の祈り。
扉の奥、輝く剣が浮かんでいた。
それはかつて“イサナの祈り”により生まれ、
彼女自身が“時の神殿”の記憶そのものと同化した証。
「……あなたの未来に、私はいる。
だから、この時を……受け取って」
手を伸ばすと、剣は光の波動となり、彼女の胸へと吸い込まれていく。
その瞬間、ヒユの姿は、
新たな“祈りの剣”──キサトとして昇華された。
──イサナの手の中、静かに剣が震える。
(……この世界はまだ終わっていない。
毒に染まりかけた祈りは、必ずもう一度、繋ぎ直せる)
そして、祈りは再び“時”を超え、仲間の元へと広がっていった。
黒き五芒星、第三の柱「アルズマ」が放った毒は、
イサナの世界に静かに広がり続けている。
だが、それを打ち破るのは──信頼と時間。
この回で、ヒユはついに「キサト」へと昇華され、
イサナの中で本当の“祈りの剣”として完成した。
次回、祈りが再び失われようとする中で、
イサナは“剣”としてのキサトの声を聴き、
祈りの意味を再び問われることになる──




