【第69話】 #《カボシア、封印の星より還る》
ティアナが祈りによって解放された直後――
次に揺らぐのは、星の座。
そこは本来、イサナたち“アマリカムの祈り”すら届かぬ領域。
封印されし存在、カボシア。
彼は静かに目を開け、星の牢獄より舞い戻る。
ティアナの波が静まったあと――
イサナたちは、束の間の静けさの中で、深く息を吐いていた。
しかし、空が突如として揺れた。
「これは……星の震動?」
セオリが顔を上げる。
その瞳に、見たことのない構造図が浮かぶ。
「イサナ。これは“星の結界”が崩れてる。
人の祈りじゃ届かない、もっと上位の座が動いてる……!」
アマネが呟く。
「次は……カボシアかも」
その名を聞いた瞬間、
イサナのスマホが“表示不能”の警告音を鳴らした。
画面に浮かぶのはただ一つ――
《KX-星封印コア-00 解錠》
「なんだこれ……!?」
ミハヤが構えようとした瞬間――
空に**“ひとつの星”**が墜ちてきた。
大地に衝突する寸前、その星は逆に浮き上がり、天に光の環を生み出す。
中から現れたのは、鋼鉄のような黒い鎧をまとう男。
「我は――カボシア」
その声は、まるで宇宙そのものが唸っているようだった。
その存在には感情も、怒りもない。
ただ、“在る”という事実のみが、この世界を軋ませていた。
「かつて我は、星の法則を乱す者として封じられた」
「だが今――祈りの均衡が崩れた。
白と黒が語られ、そして中庸が欠けた。
ならば我が現れる道理がある」
セオリが青ざめる。
「この存在……ロジックがない。“在る”だけで、祈りを無化する……!」
アマネが叫ぶ。
「このままじゃ、すべての神域の機能が――!」
イサナが一歩前に出る。
「待って……君は、何のために動く?」
カボシアはゆっくりと振り返る。
「我は、“均衡の崩壊”そのものだ。
イサナよ。おまえの祈りが、誰かを救ったその時点で、別の均衡が崩れる」
「正義があれば、悪が生まれる。
光が強くなれば、影が深くなる。
――我はその“揺り戻し”だ」
イサナの手が震える。
「じゃあ、どうすれば……!」
カボシアは、ゆっくりと手を掲げる。
「祈るな。祈りが存在する限り、我は何度でも現れる」
その言葉は、全否定の祝詞だった。
瞬間、世界の神殿の祈り柱が一部崩れ、アマリカムの神域に干渉が始まった。
「イサナ!!」
皆が叫ぶ中、イサナは静かに目を閉じた。
「じゃあ――祈るよ。それでも」
カボシアの眉が微かに動いた。
「祈りを否定されても、
それでも誰かのために祈れるのが、僕たち“ヒト”だから!」
次の瞬間――
祈りの光が、星空に向かって放たれる。
空に、もうひとつの星が生まれようとしていた。
“均衡の揺り戻し”として現れたカボシア。
彼の存在は、「祈り」の根本的な否定であり、
イサナたちの信じる世界にとって最大の“ロジックの崩壊”。
しかし、イサナはなおも祈る道を選びました。
次回――
【第70話:揺るがぬ祈り、星を結ぶ者(仮)】
イサナの祈りが“新たな星”を呼ぶ。
そして、その星は……世界にとっての“対となる鍵”になるかもしれません。




