:現代編 最終話(第7話) タイトル: 「伊弉諾の社と、目覚めの刻」
五つの神域を巡り終え、御朱印帳に五芒星が刻まれたとき――
速水日向の魂は、もう“戻れない何か”に触れていた。
最後の地、伊弉諾神宮。
そこに待っていたのは、“はじまり”と“おわり”、
そして新たな“目覚め”だった。
淡路島。
かつて“国生み”が始まったと伝えられる島。
その中心にある伊弉諾神宮の境内へと、速水日向は静かに足を踏み入れた。
早朝の陽光が木々の間から差し込み、参道を黄金に染めている。
(ここが……すべてのはじまりか)
境内に入った瞬間、空気が変わる。
どこかで見たはずの“光景”が、脳裏に一斉に蘇ってくる。
伊勢の光。
熊野の声。
元伊勢の風。
伊吹の霧。
すべてがこの社へと収束していく。
御本殿の前に立ったとき、日向はもう“日向”ではなかった。
目の奥が熱くなり、御朱印帳を取り出す手が微かに震える。
帳の最後の白紙のページに、自然と墨がにじむ。
──「イサナ」──
その名は、もう“誰か”のものではなかった。
(……俺の、名だ)
ページに現れた光の印が、柔らかく脈動を始める。
そして、五芒星の形が白く発光し――
帳全体が光に包まれ、ゆっくりと空へ消えていった。
手の中にはもう何も残っていない。
けれど、胸の奥には確かな熱が宿っていた。
「……ありがとう」
誰に向けた言葉だったのか。
それは、これまで出会ったすべての神域か。
あるいは、自分自身の中にいた“イサナ”という魂か。
空を見上げると、
そこには五つの星が、淡く連なって瞬いていた。
その中心で、
“彼の物語”が、ゆっくりと始まろうとしていた。
速水日向の魂は、“イサナ”という真名を思い出した。
現代での記憶と祈りは、異世界での新たな旅への“扉”となる。
ここから物語は、本編へとつながっていく――
すべては、神々と祈りが結ぶ、“次元を超えた魂の継承”の物語へ。




