スピンオフ:現代編 第5話 タイトル: 「導かれし五芒星・第一の地へ」
夢の中で呼ばれる名前、「イサナ」。
目覚めつつある記憶に導かれるように、日向は五つの神域を結ぶ“星”を巡る旅に出る。
最初の地は、すべての始まりにして中心――伊勢神宮。
そこで彼が見たものは、失われたはずの“自分”の輪郭だった。
「五つの点を結ぶと、星になる」
ノートの上に何気なく描いた五角形を見つめながら、日向はふと呟いた。
御朱印帳に浮かび上がった印。
それは“伊勢”“熊野”“元伊勢”“伊吹山”“伊弉諾”の五つの神社を示していた。
(あの日の祠が、俺にこの道を教えてくれたのか)
週末の朝。
日向は久々に有給を取り、鞄に御朱印帳を忍ばせて新幹線に乗っていた。
向かう先は、五芒星の第一の地――伊勢神宮 内宮。
近鉄五十鈴川駅からのバスを降り、宇治橋を渡った瞬間、
空気ががらりと変わった。
(……ここだ)
深い森。清らかな川のせせらぎ。
そして、“何か”が見ているような静かな気配。
参道を歩くたびに、記憶の奥で誰かの声が囁く。
──ヒュウガ。
──イサナ。
──還りなさい。
正宮に立ったとき、日向の目に涙が滲んだ。
理由はわからない。
けれど、たまらなく懐かしかった。
「……ただいま」
自分でも驚くような言葉が、唇からこぼれた。
神楽殿の前で、御朱印帳を開くと、
誰も書いていないはずのページに金色の“しるし”が現れる。
それは、かつて神々の力が封じられた“御柱”の形に似ていた。
そして、ページの余白に墨のような影が浮かぶ。
──「星はひとつ目を開いた。次は、南の水に祈れ」──
(南……熊野だ)
次なる地が、告げられた。
そのまま帰る気にはなれず、日向はもう一度、宇治橋のたもとに立った。
川面に映る自分の姿が、ほんの少しだけ変わって見えた。
それは、速水日向という名前に隠された、
“もう一人の自分”の輪郭だった。
伊勢の地で、日向は“懐かしさ”という名の記憶に触れた。
御朱印帳が示す星の導きは、次なる地・熊野へと続いていく。
次回、「熊野・元伊勢・伊吹山──交差する祈り」へ。




