第7話:封じられし道と、目覚める声
セオリの胸に秘められていた想いと、村を出られなかった理由。
そして、イサナと出会ったことで静かに動き出す運命の歯車。
今回は“運命”と“意志”が交差する、大切な一歩の物語です。
夜の帳が下り、村は静寂に包まれていた。
囲炉裏の炎がぱちぱちと鳴り、イサナはふと目を覚ました。
隣に寝ていたはずのセオリがいない。
彼女の気配を追って、村の奥にある祠へと足を運ぶ。
その奥には、霊木を祀る“封じの間”があると聞いていた。
——ギィ……
木の扉を開けると、そこには跪くセオリの姿があった。
「……来てくれたんだ」
「ここは……?」
「私の“役目”の場所。霊木の声を聴くための、巫女の間」
セオリはゆっくりと立ち上がり、手のひらを木にそっと触れた。
「ずっと、この木が私に語りかけていたの。
『おまえの時ではない』『ここを離れてはならない』って。
でもね、イサナ……あなたが来て、声が変わったの」
イサナは黙って、彼女の言葉に耳を傾ける。
「『そなたは鎖ではなく、扉である』って……」
突然、木の幹が淡く光り、ふたりを包み込む。
幻のように、過去の映像が浮かび上がった。
幼き日のセオリ。泣きながら母の亡骸にすがりつく姿。
そして、霊木に誓う。
『わたしが村を守る。外には出ない。ずっとここにいるから……』
その言葉が呪縛になっていたのだ。
映像が消え、涙を浮かべたセオリがイサナに向き直る。
「でも、もう……違うよね?」
イサナは静かに手を差し出す。
「一緒に、行こう。扉を開けに行こう」
セオリがその手を取った瞬間、封じの結界が音を立てて崩れ落ちる。
霊木の葉が、ひとひら落ちた。
それは役目を終えた証。
月明かりの中、ふたりは並んで歩き出した。
セオリが“扉”となる覚悟を決めた回でした。
長年背負ってきた「村の巫女」という役目と呪縛、
それを乗り越えるには、きっと誰かの“ことば”が必要だったんだと思います。
次回はいよいよ、村の外へ。
ふたりの旅が本格的にはじまりますよ!