【第65話】 #《神のいない天界、空白の王座》
神なき天。
そこに座すべき者を、誰が名乗るのか。
光の神々が国を築いた一方、
影の神々は「空白の王座」を奪うべく動き出す――。
「空だな……」
ルーシェルは虚空を見上げ、うっすらと笑った。
その背には、赤黒い翼。
かつて“天の最上位”に在ったその者は、かつてと同じように美しく、そして深く傷ついていた。
ロクナが傍らに現れる。
「上を見ろ、ルーシェル。天の王座が空いている」
「それは――神が座る場所だ。いや、“神だった存在”が、な」
ルーシェルの瞳が細められる。
「……かつて我らはそこにいた。“祈り”を受ける側として、な」
ロクナは、どこか懐かしむように微笑んだ。
「だが、今は違う。“祈り”を操作し、“祈り”を作る者が神だ。
イサナはそれに選ばれた。ならば、我らはその反転として――“祈りを否定する神”になる」
空の奥、そこには誰も座っていない“天上の空白”。
五芒星の中心に対応する、ただ一つの王座。
「ここに座るのは、我らでいい」
「誰が座る?」
ルーシェルが問う。
「決めるとしよう。“黒の祈り”を最も正確に操る者が、その座を得る」
それは、選定であり――
宣戦布告だった。
ロクナは笑い、薄闇に呟く。
「イサナよ、おまえが築いた王国“アマリカム”。
我らはその影、“カムリ=カラ”と名乗ろう」
闇の星が一つ、浮かび上がる。
⸻
一方――
アマリカムの聖域にて。
イサナは、静かなざわめきを感じていた。
「……何かが、始まってる」
ツユカが振り返る。
「天が、震えてる……これは、神が戻る時の――」
セオリの瞳に、情報の奔流が流れ込む。
「違う……これは“別の神”の到来よ。私たちとは、違う系統の」
イサナは拳を握り、呟いた。
「まだ、終わってなかったんだな――」
虚無の空に、王座が生まれる。
それは“かつての神々”が捨てた座、
そして“今の神々”が決して座ろうとしない座。
イサナの世界「アマリカム」に対して、
ロクナたちは「カムリ=カラ(祈りの反転、神の虚無)」を名乗りました。




