【第58話】 雷の神殿――記憶に撃たれし者
いよいよ最後の神殿、「雷」へ。
神の記憶と祈りの座を巡る旅も、いま転機のときを迎えようとしています。
雷の神殿に待ち受けていたのは、試練の巫女――ライナ。
無邪気さと危うさを兼ね備えた彼女が放つ雷は、イサナたちの“内側”を撃ち抜いていきます。
空を裂くように、稲妻が走る。
雲間に現れた“雷の柱”の下、古びた石段が浮かび上がっていた。
「……ここが、最後の神殿か」
イサナが呟くと、空気が一気に重くなる。
雷鳴が轟くたび、大地そのものが脈打つように震えていた。
「足元、気をつけて……」
セオリが前に出ようとしたそのとき――
バチィィィンッ!
突如、光が炸裂した。
視界が一瞬、真っ白に染まる。
「うわっ……!?」
「何これ――っ!?」
次の瞬間、神殿の正面に、光の奔流のような姿が現れた。
その中心に、ひとりの少女が立っていた。
髪は雷光のような淡金色。
短い袖の巫女装束に、赤金の紋様が刻まれている。
「……ふああ、やっと起きた……」
少女は口元をこすりながら、大きくあくびをした。
「君たち、ボクの神殿に勝手に入ったんだよね?」
イサナが身構える。
その気配は――ただの人間ではない。
「……君が、この神殿の守り人か」
「うん。ボクの名前は――ライナ。
雷と記憶を守る巫女であり、雷の神に選ばれた者。
で……君は?」
「イサナだ」
「へぇ。なんか、面白そうな顔してるね。じゃ、さっそくだけど――」
バチンッ!
再び雷が走る。
だが今度は、光ではなく、“映像”が、空中に浮かんだ。
それは――イサナの“記憶”。
「ッ……!?」
目の前に映ったのは、現代――“速水 日向”として過ごしていた頃の自分。
机に突っ伏して眠る姿。
何をやっても虚しさだけが残る、孤独な日々。
「ボクの雷は、“記憶”を引き出すの。
それがどんなに痛くても、もう一度見てもらうのがボクの役目だから」
ライナは無邪気に言った。
「みんなも――やってみる?」
アマネ、ミハヤ、セオリ、それぞれに雷が走る。
映し出される、誰にも見せたことのない傷跡。
「やめてっ!」
アマネが叫ぶが、ライナは止めない。
「これが、“本当のあなたたち”でしょ?
痛みから目を背けてたら、神の座には届かないよ?」
その言葉に、イサナは息を呑む。
(これは……試練なんだ)
「お前、わざと……!」
「もちろん。本気の試練だからね♪
でも――“耐える”だけじゃダメ。
“受け止めて、超える”。
それが……雷の力」
雷鳴が響く。
空から落ちた閃光が、イサナの足元を砕いた。
その一撃の先に、彼は立ち上がる。
「……そうか。
過去を否定しなくていい。
痛みを力に変える――それが、お前の言う“雷”なんだな」
「!」
ライナの表情が揺れる。
その瞳に、今までにない感情が宿った。
「……なんだ、それ。ズルいよ。
そんな顔で立ち上がられたら――ボク、もう、できないよ……」
彼女の足元で、雷が収束していく。
「ライナ……」
「ボクは……ずっと一人で、ここにいたんだ。
誰にも踏み込まれたくなかった。……でも」
イサナが手を差し出す。
「だったら、一緒に来ればいい。
過去も痛みも、全部ひっくるめて――お前も、俺たちの仲間だ」
ライナは、わずかに笑った。
「……うん。行く。
ボク、君となら――もう少しだけ、雷を信じてみたい」
いよいよ登場した新ヒロイン、雷の巫女・ライナ!⚡️
無邪気だけど鋭い観察眼、試練の中に愛がある――そんな存在として描いています。
雷の神殿は“最終試練”であると同時に、仲間の“魂”をさらけ出す場所でもあります。
過去を受け入れること=本当の意味での“覚醒”の前提なのです。
次回、雷の神殿の最奥へ。
世界が“始まりの場所”へと収束していく中、ヒユの残した言葉が再び意味を持ち始めます――。




