【第57話】 雷光に導かれしもの
目覚めた少女・ツユカ。
彼女は“ソラノヒメ”の転生体でありながらも、まだ記憶は深い霧の中。
でも、彼女はイサナたちと共に歩き出す決意をし、旅は最後の神域――雷の神殿へと向かう。
今回はその“第一歩”と、“雷”の気配が忍び寄る静かな転換の章です。
神殿を出た夜。
月は高く、静かにその光を地上に注いでいた。
神殿の外で、イサナたちは火を囲んでいた。
ツユカは少し離れた場所に座り、星を見上げていた。
「……寒くないか?」
イサナがそっと声をかけると、ツユカは小さく首を横に振った。
「……ありがとうございます。でも……なんだか、夢の中にいるみたいで」
「眠ってた間の記憶、ないのか?」
「はい……でも、不思議なんです。皆さんのことを、どこかで……知っている気がするんです」
彼女の瞳には、戸惑いと微かな希望が宿っていた。
「私……何者なんでしょうか」
イサナは少し考え、そして穏やかに言った。
「まだ全部を思い出さなくてもいい。思い出したくなったときに、ゆっくりでいい。……俺たちは、君と一緒にいる」
ツユカの表情が揺れる。
言葉よりも、あたたかい何かが胸に差し込んできたようだった。
「……私も、皆さんと一緒にいても、いいんですか?」
「もちろんだよ」
アマネが笑って言う。
「記憶よりも、今のあなたの想いが大事だから」
ミハヤも頷く。
「そうそう。それに、戦えるようになるまで育ててあげるし!」
「……私は戦いが得意では……」
ツユカは目を伏せたが、隣のセオリがふと口を開いた。
「戦うことだけが力じゃない。……あなたがここにいるだけで、きっと意味があるわ」
ツユカの目が見開かれる。
「……ありがとう、ございます……」
初めて、彼女が少しだけ笑った。
その笑顔は、どこか懐かしく、そして――確かに“ソラノヒメ”を想わせるものだった。
◆
翌朝。
空には鈍い雲が立ち込めていた。遠くの空で、かすかな雷鳴が響いた。
「……来るな。雷の神域が呼んでる」
イサナが空を見上げて言うと、雷の方向にだけ、黒い雲が裂け、光の柱が地に突き刺さるのが見えた。
「最後の神殿……ですね」
セオリが低く呟いた。
「じゃあ、行こうか」
イサナが言い、全員がうなずく。
ツユカは、少しだけ躊躇いながらも、歩き出す皆の背を追った。
その足取りはまだ不安定だが、確かに“旅人の一歩”だった。
雷の神殿――
そこに待つのは、さらなる“試練”。
そして、その先で――時の神殿で出会ったヒユの言葉が、再び意味を持ち始める。
イサナと仲間たちは、最後の“祈りの座”へと向かう。
今回は“静と動”の狭間の章。
ツユカが仲間として旅を始め、少しずつ“ソラノヒメ”としての片鱗を取り戻し始めました。
雷の神殿では、新たな“守り人ヒロイン”が待っています。
そして、時の神殿で出会ったヒユの言葉が、この先の覚醒と選択に大きく関わってきます。
物語は、いよいよ核心へ――。




