第53話「時の渦、交差する祈り」
神話の記憶が明かされた今――
五元の封印を越えた先に待つのは、“時”の扉。
それは、かつて失われた祈りと、未来へ繋がる運命を映し出す。
風が止み、空間が静かに閉じた。
封印の扉の向こう、黒曜の床に立つ三人の周囲に、再び空間の歪みが生じていた。
今度はそれが、ゆっくりと「渦」となって広がっていく。
「これが……“時”の力?」
ミハヤが、小さく呟く。
その足元に、螺旋状に広がる“時の印”が浮かび上がる。
五元の封印が解かれたことにより、次なる領域――“時の神域”への道が拓かれたのだ。
「この渦の中心に、何かある」
イサナが前に出ようとした、そのとき。
――ヒュゥン。
一瞬の閃光とともに、空間の中に“誰か”が現れた。
「……え?」
そこに立っていたのは、蒼い衣をまとう少年。
けれど、その顔にはどこか見覚えがあった。
「あなたは……!」
セオリが声をあげる。
少年は静かに頷いた。
「俺の名は“ヒユ”。“時の神殿”の守人だ」
その瞬間、渦が大きく唸り、周囲の景色が変わる。
神殿の柱、時の歯車、浮遊する記憶の粒――
まるで、世界そのものが「時間」として息づいていた。
「ここは、時の交差点。
過去・現在・未来、全てが重なり合う場……」
ヒユの目が、イサナたちを射抜く。
「君たちには“選択”が求められる。
どの記憶を残し、どの祈りを未来に繋ぐのか――」
そのとき、時の渦が再び蠢き、三人の視界に“それぞれの過去”が浮かび上がる。
セオリの祈り。
ミハヤの火の記憶。
そして――イサナが見たのは、自分がまだ“日向”だった頃の、現代の記憶だった。
「これは……僕の……」
遠ざかったはずの記憶が、呼び戻される。
過去と現在、そして未来が交錯する“時の渦”の中心で、三人の魂が揺れ始めていた――
“時の神域”に入ったイサナたちは、ついに「過去・現在・未来」が交差する世界へ。
そこに現れた「ヒユ」という名の少年が、何者であるのか――
そして彼らが選び取る“祈り”とは何なのか。次回、深く踏み込んでいきます。




