第52話「神話の断片、語られる過去」
封印の扉を越えた先に、現れた“記憶の映像”――
そこには、語られなかった神話と、自らの起源が隠されていた。
そして今、彼らは“過去”と向き合うことになる――
静まり返った封印の大広間。
イサナが手にした“封印の剣”は、黒曜の刃に淡い言霊の紋が浮かんでいた。
その瞬間、周囲の空間が淡く揺らぎ、再び“記憶の映像”が浮かび上がる。
今度は、もっと鮮明で、もっと深く――まるで、魂に直接語りかけてくるようだった。
「これは……」
セオリが思わず呟く。
そこに現れたのは、一柱の神――
その名は「アマツミカボシ(天御陰星)」。
闇の神と呼ばれ、世界の均衡を保つために“言霊の力”を封じようとした存在。
「我が言霊は、光と闇を司る。
調和なき力は、やがて世界を滅ぼす」
その声に応じて現れたもう一柱の神――名を「イサナギ」。
それは、イサナの“前の名”であり、太古の神々のひとり。
「言霊は滅ぼすためにあるのではない。
響かせ、つなげ、祈りへと昇華させるものだ」
二柱は対立し、やがて神々の間で“言霊戦争”が起きた。
「これが……かつての世界……」
ミハヤの瞳が揺れる。
そして映像は、戦火に包まれる神域と、封印される五元の力――
さらに、最後に現れたのは“もう一人の巫女”だった。
「これは……ヒミカ……?」
セオリが声を詰まらせる。
赤い衣をまとった巫女。ミハヤに酷似したその姿は、最後の言葉を残し、炎に消えた。
「言霊は……命そのもの……必ず、継がれる……」
映像が消え、三人はしばらく言葉を失っていた。
「これが、語られなかった神話……」
イサナは、手にした剣を見つめる。
その刃に映る自分の瞳は、もうかつての“少年”ではなかった。
「僕たちは、この記憶を抱えて……前に進まなきゃいけないんだな」
セオリとミハヤがうなずいた。
扉は開かれた。過去は語られた。
そして今――彼ら自身が、物語を紡ぐ番だった。
太古の神々と、言霊戦争。
そして、イサナとヒミカの“前世”に繋がる記憶が現れたことで、世界の輪郭がより深く浮かび上がってきます。
次は、五元の先――“空間と時間”を超える旅へと進んでいきます。




