スピンオフ:現代編 第2話「御朱印帳と、見知らぬ記憶」
ふと立ち寄った神社で、“はじまりの御朱印帳”と出会った速水日向。
それはただの趣味の始まりではなく、魂の記憶に触れる予兆だった――
静かに動き出す、目に見えないものたちの物語。
御朱印帳を手に取ったとき、
日向の胸の奥に、微かにざわめくものがあった。
(……これは、ただの帳面じゃない気がする)
深い藍色の表紙に、金で押された「始」の一文字。
まるで、最初から自分のために置かれていたかのようだった。
「……せっかくだし、一枚もらっていくか」
賽銭箱に初穂料を納め、書置きの御朱印を一枚、帳にそっと貼りつけた。
“○○神社 御祭神○○命”
墨のにおい、和紙の手触り。
どこか懐かしく、どこか遠い。
そして、ふいに目の奥に白い光がよぎった。
……赤い光の中で、誰かが祈っている。
……木々に囲まれた祭壇、風に舞う紙垂、どこかの神域。
……火のような“声”が、心に響く。
(……え? 今の……)
ふらりと体が揺れ、日向は石段に腰を下ろした。
目を閉じ、呼吸を整える。
「……疲れてるのかな。最近ちょっと無理してたしな」
それでも、あの“気配”は胸に残ったままだった。
神社を出たあとも、道すがら何度も振り返ってしまう。
何かが、まだそこに立っているような――
もしくは、自分を送り出してくれたような、不思議な感覚だった。
(また……来るかもしれない)
その夜、久々に夢を見た。
白く霞む霧の中で、
彼はひとり、どこかの神社の鳥居をくぐっていた。
はじまりの御朱印帳が、日向の記憶を静かに揺らし始めます。
それは過去の記憶か、未来の導きか――
次回、「夢の神域、風の気配(仮)」へ続きます。




