第38話「焔の封印、祈りの扉」
「ヒミカ」という名が目覚めたことで、古の記憶と共鳴し始めたミハヤ。
カムナの神域に満ちる“言霊”と“焔”の波動が、封じられし神話の扉を揺り動かしていく――
深い森の風が、静かに揺れていた。
ミハヤの中で目覚めた“ヒミカ”という名――
それはただの記憶ではなく、“封印”の鍵そのものだった。
「……まだ、何かが残ってる。あの祈りの奥に」
そう呟いたミハヤの瞳に、赤い光が一瞬だけ宿る。
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カムナの神域の奥、誰も近づかない“封印の石室”があるという。
案内役をしてくれた老神職は、祠の入口で立ち止まり、言った。
「この先にあるのは、忌まわしき神火を封じた場所……
だが、おぬしの中にそれが呼応したのならば、立ち入る資格があるのかもしれん」
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イサナとセオリと共に石室へ向かう三人。
その扉はまるで心音のように鼓動し、ミハヤが近づくと自然と開いた。
中は真っ暗だった。
けれど、ミハヤの手に浮かんだ“赤い紋様”が光を放ち、祭壇の封印文字を照らす。
「……これは、祈りのウタ……?」
セオリが目を凝らす。
石に刻まれていたのは、古代の言霊の詩だった。
カムナヒの ウタカタそむる ヒノミコの
トキハメノミチ ミチルマデノカミ
「……カムナ火の、泡のような記憶。火の巫女が、時を解くまで神と満ちる道……」
イサナが読み上げると同時に、祭壇の奥から紅蓮の光が走る。
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眩い光の中から浮かび上がったのは、火の結界に守られた“扉”。
「ここが、“焔の封印”……!」
ミハヤの掌が光を強める。
けれど、その瞬間――
封印の扉の前に現れたのは、もうひとつの“影”。
「……目覚めを、妨げる者がいるのか」
低く響いたその声と共に、結界が揺れた。
そこに立っていたのは、漆黒の衣をまとい、焔を歪ませる存在だった。
「お前の炎は、災いをもたらす。再び封じられるべきだ」
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「それでも、あたしは……自分を否定しない!」
ミハヤの叫びと共に、焔が広間を照らす。
紅蓮と黒焔――ふたつの炎が、いま激突しようとしていた。
それは、ヒミカという記憶と、今のミハヤとの“魂の対話”でもあった。
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「イサナ、セオリ……私、たぶんここで試されてる」
「一緒に行こう、ミハヤ」
イサナが力強く言う。
「うん……君の火を、信じるよ」
セオリもまた、微笑んだ。
そして、三人は光の扉へと歩を進める――
そこに待つのは、“祈り”が封じた真実と、“火の神話”の目覚めだった。
ヒミカの記憶が開き始め、ミハヤは“焔の封印”と対峙します。
彼女の内なる“火”は、世界の鍵なのか、それとも災いの始まりなのか――
次回、いよいよ“火”と“闇”が交差する魂の戦いへ!




