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第37話「封印の記憶、呼び覚まされる名」

カムナの神域にて、“言霊の源泉”に触れた三人。

響き合う記憶の中、ミハヤの中に浮かび上がった名――「ヒミカ」。

それは、失われた古代の記憶の扉を開く鍵だった。


「ヒミカ……?」


ミハヤの呟きに、風が一層強く吹いた。

その名に呼応するように、空間がざわめき出す。


「……その名、思い出したの?」


セオリがそっと問いかけると、ミハヤはかすかに頷いた。


「でも……“私”じゃない気がする。けど、懐かしくて、怖いくらいに――」


そのとき、祭壇の石板が再び光を放ち、ミハヤの前に幻影が浮かび上がる。

そこには、古代の衣をまとい、焔を背負った少女――まるで“もう一人のミハヤ”のようだった。


「これは……?」


「おそらく、かつての“ヒミカ”だ」

イサナが呟く。


幻影のヒミカは、ゆっくりと手をかざすと、焔の環が広がり始めた。


「これは“記憶の器”――封じられた過去を映す鏡」


声が、空間全体に響く。


焔の環の中に映し出されたのは、かつて栄えていた神代の国。

その中心で、祈りを捧げる巫女の姿があった。

赤き髪、琥珀の瞳――それは、紛れもなくミハヤと同じ容貌。


「……わたし……こんな場所、知らないのに……知ってる」


ミハヤの中に、火のような記憶が流れ込んでくる。

それは、燃える街、倒れゆく人々、封印される“火の力”……

そして、最後に残された少女の祈りの声。


「“この身に宿る火を、未来へと繋ぐ”――」


祈りと共に、幻影のヒミカは焔と共に消えていった。

静寂が戻る。


ミハヤは震える手で胸元を押さえる。


「……私の中に、“誰か”がいた。いや……わたしが、その人だったのかも……」


イサナはゆっくりとミハヤの肩に手を置く。

「大丈夫。たとえどんな記憶があっても、それが今の君を否定するものじゃない」


セオリもそっと微笑む。

「きっと、それはあなたの中の“使命”なんだよ」


ミハヤは小さく笑った。

「……ふたりと一緒にいて、よかった」


遠く、再び風が吹く。

それは、新たな旅路の始まりを告げていた。


そして――

ヒミカの名を抱いたミハヤは、己の運命と向き合う決意を固めるのだった。

ミハヤの中に眠っていた名「ヒミカ」。

それは、かつて神代に祈りを捧げた巫女の記憶。

火の記憶と共に、失われた“神話”の真実が少しずつ解き明かされていきます。


次回、いよいよ“古の封印”に迫る展開へ――。


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