第36話「言霊の源泉、響き合う記憶」
“記憶の扉”を越え、三人が辿り着いたのは「カムナ」と呼ばれる神域。
そこには、すべての言霊の根源と、古代の“記憶”が眠っていた。
一歩、また一歩――
三人が進んだ先は、静けさに満ちた白銀の空間だった。
そこには、大きな水面が広がっていた。
風もないのに、さざ波がゆるやかに広がっている。
「……ここが、“カムナ”?」
イサナがつぶやくと、どこか遠くから音が響いてきた。
ぽつり、ぽつり。
水面に文字が浮かび始める。
それは、カタカムナのような円環の文字。
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「……言葉が、踊ってる」
セオリが呟いた瞬間、彼女の胸元の石が淡く光る。
「――ことだまの源泉は、“思い”と“響き”が交わる場所」
誰かの声が、水の奥から響いてきた。
その瞬間、水面が裂け、一本の道が現れる。
道の先には、光に包まれた祭壇。
その中央に、円環の“紋”が刻まれた石板が置かれていた。
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「この紋……夢の中で、見たことがある」
ミハヤが前に出る。
その赤い瞳に、祭壇が映り込んでいた。
彼女の中の火が、静かに燃える。
「これは……記憶を“繋ぐ”場所だ」
イサナの声に、二人が振り返る。
「言葉も、想いも……過去と今を繋ぐために、あるんだ」
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三人が祭壇に近づくと、石板が淡く光を放ち始めた。
「……カムナよ、開け」
セオリが囁くように言葉を紡ぐと、光が弾ける。
その瞬間、三人の胸元から、言霊の紋様が浮かび上がる。
その紋様が共鳴し、空間全体が旋律を奏で始める。
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そして、風が吹いた。
“風の記憶”が、三人の魂に囁きかける。
それぞれの“存在”の深層に眠る、祈りと契りの記憶。
その中で、ミハヤはふと、誰かの声を聞いた。
「……ヒミカ……」
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「……え?」
その名前に、ミハヤの体が震える。
何かが、確かに彼女の中で目覚めようとしていた。
「ヒミカ……わたしの……名?」
世界が微かに揺らぎ、空に亀裂のような光が走った。
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それは、“神話の扉”が開かれる兆しだった――。
“言霊”が響き、“記憶”が交わることで、ミハヤの中に新たな名が浮かび上がりました。
ヒミカ――それは単なる名ではなく、古代と今を結ぶ“巫女”の存在。
次回、封じられていた記憶がさらに解き放たれていきます。




