第35話「記憶の扉、揺らぐ真実」
“言霊の試練”を越えた三人の前に現れた、新たな“扉”。
それは、過去の記憶に繋がる封印――。
この扉の先には、彼ら自身すら知らない“真実”が待ち受けていた。
風の神殿の最奥に現れた、“記憶の扉”。
それは、渦巻く言霊の光と共鳴しながら、ゆっくりと開いていく。
中に広がるのは、まるで星空のような空間。
天と地の境が曖昧なその空間に、三人の足音だけが響いた。
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「ここは……何もない?」
イサナの言葉が空に吸い込まれる。
すると突然、足元に光の波紋が広がり、三つの光が浮かび上がる。
それぞれが、イサナ・セオリ・ミハヤの前に漂い、静かに揺れていた。
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セオリの前の光は、ひとつの古びた村の景色を映し出した。
そこには、幼いセオリと、彼女に言葉を教える白髪の巫女の姿がある。
「……これは、わたしの記憶?」
静かに呟いた彼女の頬に、一筋の涙が流れた。
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ミハヤの前には、炎に包まれた街。
人々の叫び、燃え盛る空。
そして、幼いミハヤを庇う“誰か”の手。
「守られてた……あたし、逃げてたんじゃない。あのとき……」
その手を思い出すように、自分の掌を見つめる。
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イサナの前に現れたのは、黒い空間。
その中で、名もなき者たちが争い、そして消えていく。
その中心には、白い光を背負った影が立っていた。
「……これは、僕の……?」
その影は、まるで“神”のようであり、“虚無”のようでもあった。
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やがて三つの記憶が交錯し、空間全体に風が巻き起こる。
そして、空に巨大な紋が浮かび上がる。
「これは、“始まりの印”……?」
巫女の声が、どこからともなく響く。
「真実を知る覚悟は、できましたか?」
三人は、それぞれの胸に浮かんだ想いと共に、顔を上げる。
「……進もう」
イサナの言葉に、セオリとミハヤがうなずく。
その瞬間、空間が砕け、新たな扉が開かれた――
それは、“カムナ”と呼ばれる言霊の源へと繋がる、神域の入口だった。
ついに“記憶”の扉が開かれ、それぞれの原初の記憶が明かされ始めました。
この先に待つのは、“言霊”と“神話”の核心――
そして、「彼」がなぜ選ばれたのかの理由も、次第に形を成していきます。




