第31話「祈りの残響、風の扉」
ヒミカの記憶が目覚めはじめたとき、
古代より封じられていた“祈り”の力が再び風に乗って囁き出す。
次なる導きは――“風の扉”。
朝焼けが空を染める頃、三人は小さな丘の上にいた。
背後には祠。前方には、森の中に沈むような霧の谷が広がっている。
「……ここに来たのは、何か理由がある気がする」
ミハヤが呟くように言った。
セオリは静かに頷く。
「昨夜、祈りの“言葉”が空へと舞っていった……あれは、風に届けられたのだと思う」
イサナは手にした剣の柄を軽く握りながら、谷を見下ろした。
「“風の扉”……あの谷の向こうにあるのかもな」
ミハヤは、祠の奥で見た“焔のウタ”を思い出す。
そのとき、再び頭の奥で声が囁いた。
――祈りは風に乗り、封じられし扉を開く。
「……祈りの続きを、探しに行こう」
•
谷を抜ける途中、風が妙に強くなった。
どこか懐かしいような、遠い記憶に触れるような風だった。
「風が……喋ってるみたい」
セオリの言葉に、イサナも頷いた。
「きっと、風そのものが“記憶”なんだ」
そのとき、ミハヤが立ち止まる。
眼前に、不自然に開けた円形の空間があった。
「……ここ、何かある」
地面の中央には、淡く光る石碑が埋め込まれている。
セオリが指でなぞるように触れると、風が渦を巻き、石碑に紋様が浮かび上がった。
「これは……“カムナの扉”……?」
その言葉と同時に、石碑がわずかに震え、風が高鳴った。
「この先に、何かがある。でも、開くには……」
イサナが言いかけたとき、ミハヤが歩み出た。
「……もう、躊躇わないよ。これは、わたしの祈り」
そう言って、彼女は両手を広げ、静かに目を閉じた。
「――ヒノカミ カムナガラ ヒミカの祈りを……風よ、伝えて」
その瞬間、風が渦を巻き、石碑が眩い光を放った。
扉が、開かれる。
•
風の扉の先に広がっていたのは、かつての神々の記憶が眠る“風の神殿”。
そこには、まだ語られていない“言霊の源泉”が待ち受けていた――
扉が開かれたその先には、古代の風と祈りが眠っています。
言霊の力が少しずつ形を成し、ミハヤ、セオリ、そしてイサナの魂を深く導いていく。
風の神殿にて、彼らはさらなる「真実」に触れることになります。




