表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

30/97

第29話「揺らぐ炎、封じられた名」

ミハヤの記憶の奥に眠る“叫び”と“祈り”。

それは忘れ去られた過去と、封じられた名を呼び覚ます鍵だった。

そして、名を呼ぶということは……魂の火を再び灯すことでもある。

草原の端、一本の古木の根元に、小さな祠が埋もれるように佇んでいた。

イサナたちは、その前で足を止めた。


「……この場所、夢で見た」


ミハヤの言葉に、イサナとセオリは頷く。


祠の扉は少しだけ開いていた。中から微かに温もりのある風が流れ出てくる。


三人が中に入ると、そこには古びた祭壇と、小さな石碑があった。

石碑には、かすれた文字が刻まれている。


「これは……名前?」イサナが手で埃を払う。


そこに現れたのは、一文字――いや、“文字ではない何か”だった。


「これ、カムナ……?」


セオリの声に、ミハヤが目を見開く。


「……その音、知ってる。ずっと前から、聞こえてた。“ヒ”っていう音……でも、それだけじゃなかった」


彼女はゆっくりと石碑に手を触れる。

その瞬間、祠の中に熱が満ち始め、炎の紋様が彼女の手から浮かび上がった。


「名前が……ある。でも、呼んではいけない名前……」


幻のように現れる、焔を纏った影。


「お前の中に宿る“古き火”が、再び世界を焦がそうとしている……」

低く響く声。だがそれは怒りではなく、警告のようだった。


「封じられていた“名”が、目覚めを望んでいる。だが、選ぶのは――お前だ」


ミハヤの足元に、赤い花が一輪、咲いた。


「……この名を、呼んだら戻れない気がする」


イサナが彼女の肩に手を置く。


「でも、呼ばなければ、本当の自分には会えないんじゃないかな」


ミハヤは目を閉じた。


「……いいよ。名前を、思い出す」


深く、静かに息を吸い――


「わたしの名は……ヒミカ」


その瞬間、祠の中に朱の光が奔った。


封じられていた“名”が、再びこの世界に放たれた。


そして、それは新たな試練の始まりを意味していた――。


ミハヤの中に封じられていた“名”、それは「ヒミカ」。

かつて火を操ったとされる巫女の名が、今ふたたび響き始めます。

次回、彼女の中の“火”が真に揺らぎ出すとき、物語はさらなる深みへ。



次回の30話では、この「ヒミカ」という名に隠された秘密、

そして、それを巡る“神話”の断片が描かれていきます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ