第28話「灰の記憶、沈黙の叫び」
燃える幻影の中で出会った“誰か”。
その囁きは、ミハヤの心の奥に眠る痛みと向き合う時が来たことを告げていた。
灰の中に残る記憶と、まだ語られぬ叫びが、静かに目を覚まし始める。
焼けた街の跡を歩きながら、ミハヤは黙っていた。
セオリもイサナも、無理に言葉をかけようとはしない。
彼女の歩幅に合わせて、ただ静かに寄り添っていた。
「……あの子、誰だったのかな」
ぽつりと、ミハヤが呟く。
「私に似てた。でも、あれは夢の中で……ずっと何度も、何度も出てきた子だった」
セオリがそっと口を開く。
「もしかしたら、それ……ミハヤの中に眠る記憶なんじゃないかな」
「記憶……?」
「うん。私たち、きっとこの世界に来る前から、何かを背負って生まれてきた気がするの。イサナも、私も、きっとミハヤも」
イサナは頷いた。
「“火”も、“声”も、“夢”も、全部つながってる。きっと、何かを伝えようとしてる」
そのとき、風が止まった。
三人の前に、一枚の“焼け残った布”が風に舞って落ちてきた。
それは、古びてはいるが、赤い糸で「祈りの紋様」が縫い取られた布だった。
「……これ、見覚えがある」
ミハヤが手に取ると、まるで布から熱が伝わってくるような錯覚に包まれる。
ふと、彼女の視界が歪んだ。
――赤く染まる空。
――叫ぶ声。
――そして、炎の中で祈りを捧げる、自分と同じ姿の少女。
「……助けてって、言ってた……!」
ミハヤが膝をつく。
掌に再び、赤い紋様が浮かび上がっていた。
「“あのとき”……私は、誰かを、助けられなかった……。それが、ずっと残ってる……」
セオリがそっとミハヤの手に手を重ねる。
「じゃあ、今からでも……その声に、応えよう。私たち、いるよ。ミハヤはもうひとりじゃない」
イサナもその隣に立つ。
「前に進もう。焔が何を示すのか……それを知るために」
ミハヤは涙をぬぐい、立ち上がった。
「……うん。もう逃げない。あの“叫び”に、応える」
空を仰ぐと、わずかに雲が割れ、光が差していた。
その光は、確かに、三人を照らしていた。
ミハヤの中に眠る“記憶の扉”が、少しずつ開きはじめました。
それは痛みと後悔、けれども未来への希望でもあります。
次回、いよいよ彼女の火種が、真の形を現す時──
ご期待ください。




