第27話「燃える幻影、記憶の扉」
風の導きに背中を押され、ミハヤの記憶の源――“燃える街”の幻影を追い始めた三人。
それは過去の残響か、それとも未来の予兆か。
火の中に閉じ込められた真実が、いま扉を叩こうとしている。
草原を越え、丘をいくつも越えた先に、その“場所”はあった。
焼け焦げた地面、黒ずんだ石畳、そしてぽつぽつと残る崩れかけた家の跡。
まるで時が止まったかのように、そこだけが異質な空気に包まれていた。
「……ここだ」
ミハヤが足を止め、静かに呟く。
「夢で見た通り……いや、それ以上に焼けてる」
セオリが不安げに辺りを見回す。
「ここ……誰もいないの?」
「……昔は、確かに誰かいた気がする。でも、今は――」
その瞬間、空気がぴしりと裂けた。
「うわっ!」
イサナが咄嗟にセオリをかばう。
地面から突如、赤黒い火柱が立ち上り、幻のように周囲の風景が変化する。
「これは……!?」
ミハヤの視界に広がるのは、“過去”の街の姿。
賑わい、人の声、笑い声。
けれどそれは、次の瞬間、叫びと炎に塗り替えられた。
「やめてっ……!」
ミハヤが思わず叫ぶと、ひとつの影が彼女の前に立ちはだかる。
その影は、紅蓮の焔を纏い、どこかミハヤに似ていた。
「……あなたは……誰……?」
幻影の少女は振り返らず、ただ一言。
「“火”に呑まれるな……見失うな」
その言葉と共に、街が再び焼かれていく。
「ミハヤ! 戻ってこい!」
イサナの声に、ミハヤの意識が引き戻された。
気がつくと、三人は元の焼けた地に立っていた。
「いまの……なんだったんだ……?」
ミハヤの手は震えていた。
けれどその瞳には、迷いよりも確信が宿っていた。
「……この力、やっぱり……あたしにしか見えないものがある。火の中に“声”があるの。誰かが、助けを求めてる――」
風が再び吹き、空に灰が舞う。
旅は、ミハヤの記憶の深淵へと、さらに踏み込んでいく――。
ついに現れた“燃える街”の記憶。
ミハヤが出会った幻影は、彼女の過去なのか、それとも“予兆”なのか。
火の中に囁く声が、三人をさらなる運命へ導いていきます。
次回もぜひ、お楽しみに。




