第23話「眠れる火種、囁く声」
夜を越え、森の中に静かに差し込む朝。
ミハヤの中に眠る「火の記憶」が、少しずつ形を持ち始めます。
夢に導かれるように、三人は祠の奥へと足を踏み入れる──
そこに現れたものは、ミハヤの過去か、あるいは未来か。
彼女の“目覚め”に向けた、はじまりの章です。
朝霧が森の地表を這うように漂い、草葉に小さな水滴を宿していた。
セオリが目を覚ますと、ミハヤはすでに起きていた。
赤い髪を風になびかせ、森の奥へ向かってゆっくりと歩いていく。
「……ミハヤ?」
声をかけると、彼女は一瞬だけ振り返り、微笑んだ。
「……夢の中で、呼ばれたの。あの祠の奥――“火”の声に」
イサナも目を覚まし、ふたりの様子に眉を寄せる。
「まだ疲れてるんじゃ……」
「……行かなきゃ。あたしの中の、何かが騒いでる」
三人は森の奥、昨日見つけた祠の裏手に回る。
そこには、隠されたように古びた石の階段があった。
「……こんなの、昨日は……」
セオリが驚くと、ミハヤが小さく呟いた。
「夢の中で……見たの」
階段を降りると、空気は一変した。
冷たさと、微かな熱の気配が混ざり合い、異様な静寂に包まれている。
やがて三人は、地下に広がる石の広間へと辿り着く。
中央には、黒い祭壇。そこに、ミハヤは引き寄せられるように歩み寄った。
「これは……?」
手を伸ばそうとした瞬間、突如、炎の気が溢れ出し、広間全体が紅蓮に染まる。
祭壇の上に、赤い光の中から“もうひとりのミハヤ”が浮かび上がる。
「――なに、これ……私……?」
その幻影のミハヤは、焔をまとい、瞳を閉じていた。
けれど、その口元がゆっくりと動き、かすかな声が響いた。
「……目覚めの時は、まだ……」
その瞬間、眩い閃光が広間を包み、三人は強い風に吹き飛ばされる。
次に目を開けたとき、祠の前に戻っていた。
「……さっきのは……何だったんだ?」イサナが息を呑む。
ミハヤは、自分の手を見つめていた。
その掌には、うっすらと赤い紋様が浮かび上がっている。
「……目覚めの時、か」
火種は確かに揺らぎはじめていた――
それが、静かに、確実に世界を変えていく気配と共に。
ミハヤの中に潜む“火”の存在が、少しだけその姿を現しました。
まだ明確ではないものの、確かに何かが“囁いている”。
それは彼女だけの力なのか、それともこの世界に眠る真実の一端なのか。
次回、さらに深く――。
彼女が自分自身を知る旅は、始まったばかりです。




