第19話「紅き瞳の少女」
新たな出会いは、風の導きとともに。
静寂に包まれた祠で、炎を宿す少女・ミハヤが姿を現す。
セオリとイサナ、そしてミハヤ。
三人の運命が、ここで重なり始める――。
「――あんたたち、どこから来たの?」
静まり返った祠の中に、少女の声が響いた。
イサナとセオリの視線の先には、炎のように燃える紅の髪をした少女が立っていた。
琥珀色の瞳が、まっすぐにイサナを射抜く。
「ぼくたちは……東の山の村から来たんだ」
イサナが一歩踏み出しながら応える。
セオリも隣に並び、少女を見つめる。
少女はしばらく黙ってから、小さく鼻を鳴らした。
「ふーん。じゃあ、あんたたちは――“風に選ばれし者”ってわけか」
「えっ……?」
「この祠は、風と火の結界。あたしがここを守ってる。だけど最近、火の方が……制御できなくなってきたの」
少女の言葉には、どこか苛立ちと焦燥が混じっていた。
「もしかして……“火の怪異”って、あなたのこと?」
セオリが恐る恐る尋ねると、少女は肩をすくめた。
「そう見える? でも違うよ。
あれは……“紅の風”――あたしの中に眠る、もうひとつの力。目を覚まそうとしてるの」
イサナとセオリは顔を見合わせた。
この少女もまた、“何か”を内に抱えている――そう、セオリと同じように。
「名前、聞いてもいいかな?」
イサナが問いかけると、少女はほんの少し口元を緩めた。
「ミハヤ。風の民にして、火を宿す者」
その名を口にしたとき、不思議な風が祠の中を駆け抜けた。
*
その夜。
ミハヤの案内で、ふたりは集落の外れの小屋に宿を借りた。
小さな囲炉裏を囲み、静かな焚き火の音が響く。
「ミハヤは、なぜこの祠を守っているの?」
イサナが尋ねると、ミハヤは薪をいじりながら呟いた。
「昔、このあたりには“火の神”がいたの。人々に恵みと試練を与えていた……。でも、ある日突然いなくなって、その代わりに“紅の風”が現れたの」
「その風が、暴れてるの?」
「……ううん、たぶん“封じられてる”の。誰かがそれを解こうとしてる。あたしの中の“火”が騒いでるのは……たぶん、そのせい」
イサナは、静かに拳を握った。
またひとり、運命に翻弄されようとしている者がいる――。
「だったら、ぼくたちと一緒に行こう」
その言葉に、ミハヤが目を見開く。
「え?」
「まだ旅の途中なんだ。世界の謎を解いていく旅。その中で、きっと“紅の風”のこともわかる気がするんだ」
ミハヤは少しだけ考えて、ゆっくりと頷いた。
「……じゃあ、あたしの中の火が暴れだす前に、一緒に来て。
その代わり、何かあったらあたしを止めてね?」
「うん。約束する」
炎がぱちりと弾けた。
その灯火の中で、ふたりと一人――新たな仲間が、静かに結ばれた。
こうして、旅の新たな風が吹き始める。
ここまでお読みいただき、ありがとうございます。
今回は新たなヒロイン・ミハヤの登場回となりました。
彼女は、炎のような情熱と冷静さを併せ持つ存在。
セオリとはまた異なる魅力で、イサナの旅に新たな風を吹かせてくれそうです。
次回は、ミハヤの“中にある火”との対峙がテーマになります。
仲間になるということ、それは一緒に傷を受け入れることでもある……。
ぜひ、続きもお楽しみに。




