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第19話「紅き瞳の少女」

新たな出会いは、風の導きとともに。

静寂に包まれた祠で、炎を宿す少女・ミハヤが姿を現す。

セオリとイサナ、そしてミハヤ。

三人の運命が、ここで重なり始める――。

「――あんたたち、どこから来たの?」


静まり返った祠の中に、少女の声が響いた。

イサナとセオリの視線の先には、炎のように燃える紅の髪をした少女が立っていた。

琥珀色の瞳が、まっすぐにイサナを射抜く。


「ぼくたちは……東の山の村から来たんだ」

イサナが一歩踏み出しながら応える。

セオリも隣に並び、少女を見つめる。


少女はしばらく黙ってから、小さく鼻を鳴らした。


「ふーん。じゃあ、あんたたちは――“風に選ばれし者”ってわけか」


「えっ……?」


「この祠は、風と火の結界。あたしがここを守ってる。だけど最近、火の方が……制御できなくなってきたの」


少女の言葉には、どこか苛立ちと焦燥が混じっていた。


「もしかして……“火の怪異”って、あなたのこと?」

セオリが恐る恐る尋ねると、少女は肩をすくめた。


「そう見える? でも違うよ。

あれは……“紅の風”――あたしの中に眠る、もうひとつの力。目を覚まそうとしてるの」


イサナとセオリは顔を見合わせた。

この少女もまた、“何か”を内に抱えている――そう、セオリと同じように。


「名前、聞いてもいいかな?」

イサナが問いかけると、少女はほんの少し口元を緩めた。


「ミハヤ。風の民にして、火を宿す者」


その名を口にしたとき、不思議な風が祠の中を駆け抜けた。



その夜。

ミハヤの案内で、ふたりは集落の外れの小屋に宿を借りた。


小さな囲炉裏を囲み、静かな焚き火の音が響く。


「ミハヤは、なぜこの祠を守っているの?」

イサナが尋ねると、ミハヤは薪をいじりながら呟いた。


「昔、このあたりには“火の神”がいたの。人々に恵みと試練を与えていた……。でも、ある日突然いなくなって、その代わりに“紅の風”が現れたの」


「その風が、暴れてるの?」


「……ううん、たぶん“封じられてる”の。誰かがそれを解こうとしてる。あたしの中の“火”が騒いでるのは……たぶん、そのせい」


イサナは、静かに拳を握った。

またひとり、運命に翻弄されようとしている者がいる――。


「だったら、ぼくたちと一緒に行こう」

その言葉に、ミハヤが目を見開く。


「え?」


「まだ旅の途中なんだ。世界の謎を解いていく旅。その中で、きっと“紅の風”のこともわかる気がするんだ」


ミハヤは少しだけ考えて、ゆっくりと頷いた。


「……じゃあ、あたしの中の火が暴れだす前に、一緒に来て。

その代わり、何かあったらあたしを止めてね?」


「うん。約束する」


炎がぱちりと弾けた。

その灯火の中で、ふたりと一人――新たな仲間が、静かに結ばれた。


こうして、旅の新たな風が吹き始める。


ここまでお読みいただき、ありがとうございます。

今回は新たなヒロイン・ミハヤの登場回となりました。

彼女は、炎のような情熱と冷静さを併せ持つ存在。

セオリとはまた異なる魅力で、イサナの旅に新たな風を吹かせてくれそうです。


次回は、ミハヤの“中にある火”との対峙がテーマになります。

仲間になるということ、それは一緒に傷を受け入れることでもある……。

ぜひ、続きもお楽しみに。


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