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第14話 名もなき森の来訪者

深い森を進むふたりが出会ったのは、人ならぬ“理を語る獣”だった。

ただ静かに、けれど確かに試されていた――

ふたりの旅に、初めて“目撃者”が現れる。


森を抜けるには、あと二日はかかる――

そうセオリは、地図を見ながら呟いた。


「道、ないんだな」

イサナが笑う。


「もともと、村以外の人が来ない場所だったから……地図もあいまいなの」

「でも、ちゃんと進んでる気がするよ。風の流れが変わってきた」

「うん……私もそう思う」


静かに響く鳥の声。木漏れ日。風にそよぐ葉の音。

ふたりは静かな時間の中、確かに“前に進んでいる”ことを感じていた。


「ねえ、イサナ」

「ん?」

「わたしたち……どこに向かってるの?」

「……正直、わからない。でも、導かれてる感じはする」

「導かれてる?」

「うん。誰かに、じゃなくて――“世界そのもの”に」


そのときだった。

風が止まり、森の空気がぴたりと静止する。


「……イサナ」

セオリの声が小さく震えた。


数歩先の茂みの向こう――何かが、いる。


「気配が……する」

「来るよ、セオリ。構えて」

イサナが木の枝を拾い、即席の武器にする。


ガサッ――


茂みから姿を現したのは、白い毛並みの美しい獣だった。

それは狼のようで、けれど瞳に“人のような理性”が宿っている。


「……お前、人間か」

その獣は口を動かさなかったが、確かに“声”が脳内に響いた。


「……! テレパシー……?」

「“言霊”を、感じ取っているようだな。なるほど……面白い」


狼はセオリをじっと見つめる。

その瞳に、なぜか懐かしさを覚えるセオリ。


「私は“ミコト”と呼ばれる者。この森を守る、古の使い」

「守る者……?」

「お前たちが持つ力――それが、この森の眠りを乱している。だが……今はまだ、見逃そう」


そう言い残し、狼の姿は霧のように消えた。


「……いまの、何だったんだろう」

「たぶん……“試された”のかも」

「わたしたちが、この旅に“ふさわしいかどうか”を……」


風が戻る。森の空気が再び流れはじめた。

その変化を、ふたりは確かに肌で感じていた。

「世界そのものに導かれている」――イサナの言葉が、静かに響きました。

ミコトと名乗る不思議な使いは、これからの旅の“何か”を象徴していたのかもしれません。

次回は、小さな村での出会いと、新たな一歩を描いていきます。

森の物語、少しずつ深くなっていくよ

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