第13話 “ことだま”の記憶、セオリの目覚め
封じられた祠の出来事から一夜。
セオリは、“声”の正体に少しずつ気づきはじめる。
ことだま――それは、世界を動かす古の響き。
静かな朝に宿る、目覚めの兆しを描きます。
「……あれは、“音”じゃなかった」
焚き火を囲みながら、セオリがぽつりとつぶやいた。
「音?」
イサナが首をかしげる。
「昨日、祠の奥から聞こえた“声”――あれ、ただの言葉じゃなかった。胸の奥に……響いて、波のように、内側から揺さぶられる感じがしたの」
焚き火の火がパチリと鳴る。
「ねえ、イサナ。あなた、前に“コトノハ”って言ってたよね?」
「うん。あの世界には、言葉そのものに力が宿ってる……って」
「もしかしたら、あの祠の“声”も――“ことだま”だったんじゃないかな」
イサナは目を見開く。
それは、自分でもうっすらと感じていたことだった。
「そうか……あの祠は、“記憶を呼び起こすための”ことだまを封じていたのかもしれない」
「うん。そして……きっと、わたしは、それに呼ばれてる」
そのとき、セオリの髪が微かに揺れた。
焚き火の熱ではない、何か――風のような、けれど風ではない“力”。
「っ……今も、聞こえる」
セオリが目を閉じ、両手を組む。
言葉にならない“祈り”のような響きが、彼女の周囲に満ちていく。
それは――
**「ウタ」**だった。
言葉でなく、旋律でなく。
でも、確かに世界を震わせる“響き”。
「それって……セオリの力……?」
「……わからない。でも、“わたしの中にあるもの”が、反応してるの。昨日から、ずっと」
焚き火の光が、彼女の白い指先に淡い光を宿す。
それは、まるで“内なる神性”が目覚める兆しのように。
イサナは、ただ静かにそれを見つめていた。
この旅は、セオリ自身の目覚めの旅でもある――そう確信した。
セオリに芽生える、祈りにも似た“ウタ”の力。
それは旅の中で、彼女が出会う運命の鍵となっていくはずです。
次回は、森の中での出会いがふたりに新たな展開をもたらします――。
どうぞお楽しみに!




